2024/12/04 20:54 |
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2013/02/04 13:10 |
ALTEC復刻版 GPA416と515を考える |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さて前回までは3回にわたりイギリスのアナログプレーヤーメーカである、The Funk Firm 社製のAchromatというターンテーブルマットのお話をしました。
外観上はともかくとして、手に取ると非常に軽い発泡系の樹脂を用いたそのターンテーブルマットは、比較的質量の高いメタル系のハードなターンテーブルマットを使用してきた立場からすると、こりゃ騙されたと思うほどにチープな印象のあるものでした。
それは純正などによく用いられるラバー系のゴム製のターンテーブルマットよりも軽いのではと思えるほどで、さらりと軽やかなフェルト系のように非常に軽量なターンテーブルマットです。
しかしブログの中でもお話したように、今までリファレンスとして使用してきたオーディオテクニカ製のアルミ製ターンテーブルマットを秒殺してしまうほど、そのターンテーブルマットとしての実力は、今まで経験を積み上げてきた常識など役に立たないというほど大きなものでした。
私がオーディオを始めたころといえば、アナログ再生も末期に差し掛かるCDプレーヤーが世の中に出始めたころの話で、その当時のアナログプレーヤーといえば、入門用から中級者向けのものはダイレクトドライブが主流で、ベルトドライブは前時代の過去の産物的な風潮もありました。
一方ハイエンドの高級機を見てみれば、物量大量投入した金属見本市のような、一人では持ち上げられそうもないほどの巨大な金属の塊というものもよく見られ、バケツのように巨大なプラッターを糸ドライブで駆動するというものも数多く見かけましたね。
私もいつかあんな巨大な金属の塊のようなターンテーブルが欲しいと思っていたものです。
アナログ再生の場合ハウリングマージンなど、どうしても外乱に対する影響を受けやすいため、その対抗策のひとつとして巨大で高質量という方向性に走ったのでしょうけど、音質的評価などを含めた結論から言えば、巨大で重ければいいというレベルの話は、恐竜が巨大化して絶滅したように需要の減少以外にも、音質的優位性が見出せない理由からその多くが消え去りました。
そんな時代を見てきたわけですから、私も当然のごとく高硬度、高質量、高剛性の3高主義になっていたものですけど、それらが必ずしも音質向上には繋がらない事は様々な経験から理解していました。
The Funk Firm 社製のAchromatというターンテーブルマットを使ってみると、必ずしも高硬度、高質量、高剛性の3高主義が良い音の条件ではないと、その理由がよく理解できましたね。
さて今回は少数派のアナログの話ではなく、一般的なスピーカーユニットに関して、マグネットの大きさと音の傾向のお話をしたいと思います。
一般的によく聞かれる話として、巨大なマグネットで振動板を駆動するユニットは音がいいと評判になる事は多く聞かれますね。
これもある意味伝説的なお話にもなりけして間違いではないものの、実際本当なの?というオカルト的要素を含む場合も時にはあるものです。
スピーカーユニットの振動板を自動車のボディーを含めたシャーシとして捉えれば、それを駆動するマグネットはエンジンに当たります。
当然このエンジンが強力であれば車の動力性能が向上する話は理解しやすい話ですね。
これと同じ理屈で考えれば、巨大マグネットで駆動するユニットは、当然高性能スピーカーユニットとなるはずです。
しかし、どういうわけか実際音を聞いてみると、この理屈が必ずしも当てはまらない場合も見られます。
これはいったいどういうことなのでしょう。
たとえば私のところでも取り扱っているALTEC復刻版を生産している、Great Plains Audio(GPA)社製のユニットには、同じ15インチサイズの振動板を持つ、416系と515系があります。
GPA 416-8B Alnico
GPA 515-8C Alnico
ご覧のように表面上の面構えはまったく同じですし、基本フレームの形状も共通です。
ALTEC時代は時代によって振動板が共通だったり異なったり、告知されないマイナーチェンジが繰り返されていましたが、こちらは基本的に共通です。
この2つのユニットの違いといえば、ユニット後ろ側にある、振動板を駆動するアルニコマグネットの大きさの違いになります。
当然416系と515系では同じAlnico磁気回路でも、総磁束も磁束密度も異なってきますし、同じ振動板を用いていても出力音圧レベルも周波数特性も異なります。
同じ振動系を使用しているため音色傾向こそ同じですけど、聞こえてくる音は意外と大きな違いに聞こえてきます。
さてこのように2つのユニットを比較してみれば、515系の方がいかにも強力で良い音がするという印象も受けますが、事はそう単純には行かないものです。
例えて言うのなら、同じ車体に異なるパワーのエンジンを載せた車と考えてもらえばわかると思います。
標準仕様のバランスの取れたノーマル車と、ハイパワーエンジンが載せられた乗り手を選ぶチューニングカーのような関係みたいなものです。
416系が必要十分で過不足のないバランスの取れた傾向を示すのに対し、515系は、強力すぎる磁気回路が時には仇となり、中音域以上の分割振動が減衰できずに暴れてしまう事もあり、相対的に中音域の音圧に対し低音域が弱く感じられ、切れやスピードや初期初動はいいものの、低音が聞こえにくいウーハーと感じてしまう事もあります。
もちろんこれらの傾向はフレームや振動板の要素以外にも、磁気回路の設計などの要素も加わりますし、また使用するキャビネットからの影響などもあるために、簡単に結論付ける事はできません。
515系は15インチクラスのユニットとしてはかなり強力な磁気回路を持ちますが、世の中にはこれを上回るマグネットのお化けみたいなユニットだって存在します。
ではそのような強力な磁気回路を持つユニットなら音が良いのかというと・・・?
今回はじめの方に話したアナログプレーヤーの話にも共通するように、大量物量投入した金属見本市のような巨体ターンテーブルが必ずしも質の良い音がするわけではないことと同じで、意外と見掛け倒しといえる場合もあるのです。
日産にGT-Rという世界屈指の高性能車がありますが、あの車の駆動方式がFRの後輪駆動だったとしたら、とてもじゃないですがあのパワーを十分路面に伝える事ができずに、ただの暴れ馬の暴走車両になってしまいますし、4輪駆動であっても、適切な駆動配分のコントロールデバイスが介在しなければ、これまたタイヤが空回りするだけの扱えない車となってしまうでしょう。
これと同じように、スピーカーユニットも適切なバランス状態にあってこそ、音楽をバランスよく奏でる事ができるものです。
そのような意味で考えると、416系が515系よりも音が悪いとか劣るというものではなく、どのような音楽を聴きたいかによって選択するものなのかもしれません。
もちろん貧弱な磁気回路ではさすがに厳しいものがありますので、ある程度強力な磁気回路のほうが反応もよく、初期初動にも優れてきますので、入力信号に対して敏感に反応する傾向にこそなりますが、磁気回路には透磁力という要素もあり、これが悪いと見掛け倒しになる事もあります。
またいくら磁気回路が良くても、振動板がヘッポコピーで粗悪な音しか出さないという事もありますし、いかにも凄そうな巨大磁気回路がついているにもかかわらず、中には飽和状態で意味を成さないものだってあるものです。
ユニットの良し悪しの判断基準のひとつに磁気回路の優劣というのはありますが、これはある程度判断材料としては有効な基準のひとつにはなるものの、超強力な磁気回路のユニットイコール高音質なユニットとならないところが、オーディオの難しいところでもあり楽しい一面かもしれませんね。
このあたりの話をすれば尽きないのですが、今回はここまで。
また次回楽しい話をしたいと思います。
サムライジャパンでございます。
さて前回までは3回にわたりイギリスのアナログプレーヤーメーカである、The Funk Firm 社製のAchromatというターンテーブルマットのお話をしました。
外観上はともかくとして、手に取ると非常に軽い発泡系の樹脂を用いたそのターンテーブルマットは、比較的質量の高いメタル系のハードなターンテーブルマットを使用してきた立場からすると、こりゃ騙されたと思うほどにチープな印象のあるものでした。
それは純正などによく用いられるラバー系のゴム製のターンテーブルマットよりも軽いのではと思えるほどで、さらりと軽やかなフェルト系のように非常に軽量なターンテーブルマットです。
しかしブログの中でもお話したように、今までリファレンスとして使用してきたオーディオテクニカ製のアルミ製ターンテーブルマットを秒殺してしまうほど、そのターンテーブルマットとしての実力は、今まで経験を積み上げてきた常識など役に立たないというほど大きなものでした。
私がオーディオを始めたころといえば、アナログ再生も末期に差し掛かるCDプレーヤーが世の中に出始めたころの話で、その当時のアナログプレーヤーといえば、入門用から中級者向けのものはダイレクトドライブが主流で、ベルトドライブは前時代の過去の産物的な風潮もありました。
一方ハイエンドの高級機を見てみれば、物量大量投入した金属見本市のような、一人では持ち上げられそうもないほどの巨大な金属の塊というものもよく見られ、バケツのように巨大なプラッターを糸ドライブで駆動するというものも数多く見かけましたね。
私もいつかあんな巨大な金属の塊のようなターンテーブルが欲しいと思っていたものです。
アナログ再生の場合ハウリングマージンなど、どうしても外乱に対する影響を受けやすいため、その対抗策のひとつとして巨大で高質量という方向性に走ったのでしょうけど、音質的評価などを含めた結論から言えば、巨大で重ければいいというレベルの話は、恐竜が巨大化して絶滅したように需要の減少以外にも、音質的優位性が見出せない理由からその多くが消え去りました。
そんな時代を見てきたわけですから、私も当然のごとく高硬度、高質量、高剛性の3高主義になっていたものですけど、それらが必ずしも音質向上には繋がらない事は様々な経験から理解していました。
The Funk Firm 社製のAchromatというターンテーブルマットを使ってみると、必ずしも高硬度、高質量、高剛性の3高主義が良い音の条件ではないと、その理由がよく理解できましたね。
さて今回は少数派のアナログの話ではなく、一般的なスピーカーユニットに関して、マグネットの大きさと音の傾向のお話をしたいと思います。
一般的によく聞かれる話として、巨大なマグネットで振動板を駆動するユニットは音がいいと評判になる事は多く聞かれますね。
これもある意味伝説的なお話にもなりけして間違いではないものの、実際本当なの?というオカルト的要素を含む場合も時にはあるものです。
スピーカーユニットの振動板を自動車のボディーを含めたシャーシとして捉えれば、それを駆動するマグネットはエンジンに当たります。
当然このエンジンが強力であれば車の動力性能が向上する話は理解しやすい話ですね。
これと同じ理屈で考えれば、巨大マグネットで駆動するユニットは、当然高性能スピーカーユニットとなるはずです。
しかし、どういうわけか実際音を聞いてみると、この理屈が必ずしも当てはまらない場合も見られます。
これはいったいどういうことなのでしょう。
たとえば私のところでも取り扱っているALTEC復刻版を生産している、Great Plains Audio(GPA)社製のユニットには、同じ15インチサイズの振動板を持つ、416系と515系があります。
GPA 416-8B Alnico
GPA 515-8C Alnico
ご覧のように表面上の面構えはまったく同じですし、基本フレームの形状も共通です。
ALTEC時代は時代によって振動板が共通だったり異なったり、告知されないマイナーチェンジが繰り返されていましたが、こちらは基本的に共通です。
この2つのユニットの違いといえば、ユニット後ろ側にある、振動板を駆動するアルニコマグネットの大きさの違いになります。
当然416系と515系では同じAlnico磁気回路でも、総磁束も磁束密度も異なってきますし、同じ振動板を用いていても出力音圧レベルも周波数特性も異なります。
同じ振動系を使用しているため音色傾向こそ同じですけど、聞こえてくる音は意外と大きな違いに聞こえてきます。
さてこのように2つのユニットを比較してみれば、515系の方がいかにも強力で良い音がするという印象も受けますが、事はそう単純には行かないものです。
例えて言うのなら、同じ車体に異なるパワーのエンジンを載せた車と考えてもらえばわかると思います。
標準仕様のバランスの取れたノーマル車と、ハイパワーエンジンが載せられた乗り手を選ぶチューニングカーのような関係みたいなものです。
416系が必要十分で過不足のないバランスの取れた傾向を示すのに対し、515系は、強力すぎる磁気回路が時には仇となり、中音域以上の分割振動が減衰できずに暴れてしまう事もあり、相対的に中音域の音圧に対し低音域が弱く感じられ、切れやスピードや初期初動はいいものの、低音が聞こえにくいウーハーと感じてしまう事もあります。
もちろんこれらの傾向はフレームや振動板の要素以外にも、磁気回路の設計などの要素も加わりますし、また使用するキャビネットからの影響などもあるために、簡単に結論付ける事はできません。
515系は15インチクラスのユニットとしてはかなり強力な磁気回路を持ちますが、世の中にはこれを上回るマグネットのお化けみたいなユニットだって存在します。
ではそのような強力な磁気回路を持つユニットなら音が良いのかというと・・・?
今回はじめの方に話したアナログプレーヤーの話にも共通するように、大量物量投入した金属見本市のような巨体ターンテーブルが必ずしも質の良い音がするわけではないことと同じで、意外と見掛け倒しといえる場合もあるのです。
日産にGT-Rという世界屈指の高性能車がありますが、あの車の駆動方式がFRの後輪駆動だったとしたら、とてもじゃないですがあのパワーを十分路面に伝える事ができずに、ただの暴れ馬の暴走車両になってしまいますし、4輪駆動であっても、適切な駆動配分のコントロールデバイスが介在しなければ、これまたタイヤが空回りするだけの扱えない車となってしまうでしょう。
これと同じように、スピーカーユニットも適切なバランス状態にあってこそ、音楽をバランスよく奏でる事ができるものです。
そのような意味で考えると、416系が515系よりも音が悪いとか劣るというものではなく、どのような音楽を聴きたいかによって選択するものなのかもしれません。
もちろん貧弱な磁気回路ではさすがに厳しいものがありますので、ある程度強力な磁気回路のほうが反応もよく、初期初動にも優れてきますので、入力信号に対して敏感に反応する傾向にこそなりますが、磁気回路には透磁力という要素もあり、これが悪いと見掛け倒しになる事もあります。
またいくら磁気回路が良くても、振動板がヘッポコピーで粗悪な音しか出さないという事もありますし、いかにも凄そうな巨大磁気回路がついているにもかかわらず、中には飽和状態で意味を成さないものだってあるものです。
ユニットの良し悪しの判断基準のひとつに磁気回路の優劣というのはありますが、これはある程度判断材料としては有効な基準のひとつにはなるものの、超強力な磁気回路のユニットイコール高音質なユニットとならないところが、オーディオの難しいところでもあり楽しい一面かもしれませんね。
このあたりの話をすれば尽きないのですが、今回はここまで。
また次回楽しい話をしたいと思います。
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