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サムライジャパン ブログ

サムライジャパン オーディオ関連を中心にしたブログです。
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2024/03/29
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2014/06/10
16:10
ALTEC 604系 復刻版 GPA 604E-SeriseⅡAlnico

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みなさまこんにちは。

サムライジャパンでございます。

私も足利のエレックス様へお手伝いに来て、早いものでもう1年です。

ついこの前は大雪騒ぎかと思えば、真夏のような暑さになり、そして梅雨入りしたかと思えば豪雨ですから、体調管理も容易ではありませんね。

さて今回のお話は、ALTECの復刻版ユニットを制作している、アメリカのGreat Plains Audio(GPA)のニューモデルのご紹介をしたいと思います。

Great Plains Audio社は、元々ALTECがスピーカー事業から撤退する際に、ALTEC製ユニットの保守サービスを目的に立ち上げられた会社で、ALTECの図面や生産設備をそのまま引き継いだ会社です。

とはいえ大規模な企業ではなく、ほとんどガレージメーカーのような小規模ですので、以前のように大規模な世界展開とはいかないようです。

そんなGreat Plains Audio社には、世界中からALTEC604-8Gの復刻版を出してほしいとの要望が数多く寄せられていたそうです。

604系の同軸2ウエイユニットに関しましては、創業時よりフェライト版のユニットは制作販売していました。

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GPA 604-8H Series Ⅱ
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GPA 604-8H Series III

でもこれらはALTEC末期の製品の復刻版ですが、JBL同様Alnicoマグネットからフェライトマグネットへ移行した頃、それを境にALTEC製のユニットの人気に陰りも見えた時代でもあります。

そのためALTEC604系の中でも今でも人気が衰えないALTEC604-8Gですが、生産終了からかなり年月も経過していますから、中古市場で高値で取引されていても、ペアが揃わないコンディションの物も少なくありません。

そのような理由から、新品で604-8Gを手に入れたいと願うマニアも数多くいたのでしょう。

このようなマニアの声に答えて、アメリカのGreat Plains Audio社(GPA)が、ALTEC604-8Gの復刻版を発売するに至ったのです。

去年も一度ブログには紹介したものの、ガレージメーカー程度の小規模がゆえに、なかなか製品ができない状態が続いていました。

ようやく生産準備も整ったようですので、ご紹介をしたいと思います。

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GPA 604E-SeriseⅡAlnico

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GPA604E-2.jpg

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同じ図面、同じ生産治具、同じ製法で作られていますから、現代に蘇った04-8Gですね。

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しかもクロスオーバーネットワークも付属していますから、エンクロージャーに入れて線を繋ぐだけ。

従来の604系のネットワークには、中音域のドライバーの音圧を下げる目的でアッテネーターが付いていましたけど、音質劣化し易いアッテネーターを避け、しかも中音域に出がちなピークなどを抑えるために、LCR共振回路を組み込んで対処しています。

何度もヒヤリングを重ねてまとめられた音作りは、あらゆる点で本家ALTEC604-8Gを超えているとのことです。

そのためほとんどフルレンジユニットのような手軽さで組み上げられます。


もちろんエンクロージャーを用意しなければならないとか、15インチサイズですから大型システムになりますので、卓上で手軽に遊ぶというわけにはいきませんけど、かつてモニタースピーカーの代名詞として世界中を席巻した604系のユニットは、現代のレベルで見てもかなり優秀な音楽表現力を持ち合わせています。

さすがに中古品を買うレベルの価格ではございませんが、往年の名機を新品で手に入れられるというのは嬉しい話ですね。

ただ小規模メーカーゆえに、大量に作り置きをせず、ほとんどが受注生産になるために待たされることが難点です。


と今回はここまで。

次回また楽しいお話をしたいと思います。

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2013/02/27
03:31
良い音 悪い音

みなさんこんにちは。


サムライジャパンでございます。


さて前回のブログでは、ALTEC604系のAlnicoマグネット版である、GPA 604-8E-Ⅱの復刻版のお話をしました。

       604e3.jpg

発売時期は未定ですが、とても楽しみなユニットの登場ですね。



ALTECの604系同軸ユニットは私も大好きなユニットのひとつなのですが、なぜこのユニットが好きなのかというあたりについてお話をしていきたいと思います。


ご存知のように、かつてALTECといえば、ボイスオブシアターとして名を馳せ、世界的に熱い支持を受けてきたブランドです。


映画館での音響システムという事ですから、会場内隅々まで音を増幅して迫力のあるサウンドを再生させますが、再生されるのは音楽だけに限らず、俳優などの音声もきっちり聞き取れなければなりません。


そのあたりが音をただ拡大する拡声器とは根本的に目的が違います。


たとえば学校などの場外放送用に、メガホン型の拡声器を使用しているところが多いのは、皆さんも記憶にあることでしょう。


ホーン型のメガホン拡声器は、ホーン効率と相まって、小さな出力で大きな音を出してくれます。


でも学校などで全体朝礼や運動会などで感じたように、ぐわぐわぼそぼその声で聞き取りにくく、音楽にいたっては、ぐわぁ~んぐぅぉ~んとはっきりしません。


これが業務用のPA装置のスピーカーになると、音楽の音はバンバンブンブンギィーギィージャキジャキと聴き取りやすくなるものの、声はグワァーグゥワァーボォーボォーとしてやはり聞き取りにくいものが数多くあります。


当然映画館の音声がこれでは、さすがに映画を見ていても興ざめしてしまいますね。



スクリーンに映し出された美しい女優さんの声が、老婆のような声だったり、太く逞しい声なんかでしたら、余計イメージダウンとなってしまいます。


そのような意味で考えると、ボイスオブシアターとしての要求は非常に高くなります。



     yun_8175a1.jpg


つまりALTECの魅力のひとつに、この人の声の再生能力高さにあるのではないでしょうか。



以前何度かブログにも書いた事ですが、私がスピーカーやケーブル、アンプなどの選定の際の基準として、家族や友人知人など、常に聞きなれた人の声を再生させて判断しているという話をしたと思います。


本来なら一番聞き慣れているはずの自分の声が一番なのでしょうが、頭蓋骨の中で振動している音ですから、当然再生させるとこんなはずじゃなかったという事になりますから、そのような意味で普段聞き慣れた方の声が一番なのです。


これでどんな事がわかるかといえば、アンプやケーブルやスピーカーなどが持っている、固有の音色の傾向を聴き取る事ができます。


私の場合音楽ソースの情報をストレートに楽しみたい事もあり、極力そこの部分の色付けを排除した、自然な音に近いものを選択してきました。


これは簡単に言えば原音忠実再生というものなのでしょうけど、この方向性が必ずしも理想的でないのは、多くのオーディオファンもご存知の事と思います。



一般的に大半の有名メーカーのオーディオ装置などの場合、固有の音色傾向などを持たせ、独自の個性を主張するものが大半を占めます。


もし仮に理想の良い音というものが原音忠実再生だったとしたら、どこのメーカーのシステムもみな同じ音になってしまいます。



それではオーディオマニアと選択肢も少なくなってしまうわけで、視聴したときに目立つ音に意図的に音作りをしたり、独自の強い個性を持たせて、聴感上の印象を強くしています。



この独自の強い個性がいわゆる良い音か悪い音かの基準となる事が多く、私たちマニアの方がよく話すように、あれ音いいねとか、あれは音悪いよなんて話す事が多いはずです。



さて私のように、ソースの音源の音を忠実に聴こうとする場合、聴きなれた声はより自然に感じ、時には驚くほどリアルな音が聴けたりもしますし、音源がどのような意図で録音されているのかなどまで感じ取れる事もあるものの、ソースの録音状態や質によっては、聴くに堪えないものが出てきてしまうのも事実です。


しかし一般的に考えてみれば、良い音か悪い音かを判断する基準としては、自分の好きな曲、つまり愛聴盤を再生させてみて、それで判断する事が多いことだと思います。


つまり音楽である音楽ソースに合わせ、オーディオ装置が良い音か悪い音かを判断をするわけです。


そこであれは音いいねとか、これは音悪いねなんて話しになるものです。



さてそのように音楽ソースで判断して音が良いとか悪いとかのジャッジを下したオーディオ装置ですが、そこで聞きなれた人の声を録音して再生してみると、意外と面白い気付きもあります。



婆さんのはずの母親の声が10代のアイドルのように瑞々しかったり、時には小さい自分の子供の声が、逞しい声に感じられたり、意外とシステム固有の強い個性に気が付くと思います。


これが音楽を聴いていて心地の良い音であるのなら、その方向性を持つものを選択していけばいいわけですから、迷いや悩みからも開放される事も多くあります。




しかしこの声の再生ですが、テレビの音声などを再生してみると、自慢のオーディオ装置の声よりも、テレビ内臓スピーカーの音声のほうが明確で聞き取りやすいなど、意外と容易な事ではないのです。




昔からオーディオマニアに音のいいスピーカーとして支持を受けてきたものの中には、この音声再生が非常に優れたものが意外と多いものです。

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ALTECの755、俗に言うパンケーキなども、再生レンジこそ狭いのですが、驚くほどリアルな質感の再生能力があります。


またNHKと共同開発されたDIATONEの2S-305などのスタジオモニターなども、基本は音声再生を正確に聞き取るためのもので、それが音楽を再生させても、ソースの質感を隅々まで正確に表現し、アコーステック楽器などの表現力がとてもすばらしい一面を覗かせます。

  011179_0_20130227032522.jpg



このように人の声の再生という、単純でシンプルな音源がきっちりと再生できるもの中に、世界的な名機が数多く存在しやすいのも事実です。


でも実際にオーディオ装置では人の声ばかり聞くわけではありませんから、愛聴盤がゴキゲンな音を奏でてくれればそれでいいわけで、そのような観点で見てみると、特定の音楽に合わせた音作りをされたシステムというのが多いのもうなずけると思います。



さてさて話がかなり脱線してしまいましたけど、私がALTEC製品を好きな理由のひとつに、人の声の再生能力の高さがあり、結果としてそれが音楽ソースの情報を正確に引き出してくれる、そんな質感の高さが魅力だと思います。


見た目が凄い大型の派手なマルチシステムも自慢の種にはいいのですが、シンプルなフルレンジユニットが好きな理由も同じです。


先ほどのALTEC755などもそうですし、DIATONEのP610の初期型なども、非常にすばらしい音を奏でてくれますし、AudioNivanaのAlnicoマグネットモデルも、やはりすばらしい表現力を持ち合わせています。


     an8alnico1.jpg



もちろん好きな音楽ソフトだけ好みの音を奏でてくれるというのも間違いではありませんから、自分自身がどのような音を望み、どのような方向性を求めているのはだけはっきりしていれば、オーディオ評論家の意見に惑わされたり、ネットの書き込みに左右されないで済みます。


音がいい、音が悪い、そう話す前に、自分が求めている音は何なのか?これをはっきりさせておくのも必要な事かもしれませんね。



と長くなってしまいましたが、今回はここまで。


また次回楽しい話をしたいと思います。


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2013/02/26
02:31
ALTEC604-8G復刻版 GPA604E-Ⅱ

みなさんこんにちは。


サムライジャパンでございます。


ここ連日ホームページリニューアルのため悪戦苦闘しておりまして、ブログの更新もほったらかしになっていましたので、できるだけ時間を作ってブログの更新をしていきたいと思います。


さて今回のお話ですが、タイトルにもあるようにALTEC604-8Gの復刻版の話をしたいと思います。


ALTEC復刻版といえばGreat Plains Audio社になりますが、今までも604系の復刻版は生産されていました。



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これはGPA604-Ⅱになります。


そしてもうひとつ

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GPA604-Ⅲです。


どちらもALTEC晩年のフェライトマグネットモデルを復刻再生産したものですが、現実的にALTEC時代の細やかな問題点を改善したり、音質的に条件のよくないクロスオーバーネットワークを新たに作り直すなどして、ALTEC時代の604よりもレベルの向上を見せた製品です。


うちのお客さんの中にもALTEC604系ユーザーの方が何人かいまして、GPA製のクロスオーバーネットワークやダイヤフラムなどをご購入いただいていますが、純正の604系は再生レンジこそ狭いものの、中音域を中心としたアコールテックな音質の質感表現が絶妙で、そこが604系の魅力であるものの、どこか音質的に古ぼけた感じに聴こえてしまう一面もあります。


そこでGPA製のクロスオーバーネットワークに交換されることをお勧めしていますが、大きく改善されたその抜けるような音質と、繊細で緻密さの表現力のアップやハイエンドの伸びやかな音質など、交換された皆様に喜んでいただいています。


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これは以前何度もお話してきたように、レベルコントロールから可変式アッテネーターを排除し、固定抵抗などのレベルあわせなどではなく、LCR共振回路による周波数特性の改善まで含めた調整が効をなしているからです。


しかもクロス周辺のロー側ハイ側も絶妙にクロスしているため、その一体感のある音質はマルチアンプではなかなか到達するのが困難なレベルで、そのあたりも評価の高さにつながっているのでしょう。



さて話が少しずれてしまったのですが、今回お話しするのは、そんな604系にALNICOマグネットモデルが登場予定なのです。


ALTEC時代のアルニコマグネットモデルとして、ALTEC604-8Gがとても人気がありました。

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世界中のレコーディングスタジオで活躍していただけではなく、一般家庭用のスピーカーシステムとしても、世界中のオーディオマニアから愛されてきたシリーズです。


晩年のALTECは磁気回路をフェライトに変えてしまいましたが、スペック的にも能力的にもすばらしいユニットではあるものの、どうしても微妙な表現力など、細やかな音質の違いに敏感な耳の肥えたマニアには、やはりそのわずかな音の違いが気になってしまいます。


前回のAudioNirvanaのマグネットの違いによる音質傾向の話にもかぶりますが、Alnicoの透磁力に優れた点が繊細で美しい表現力まで奏でるのが魅力ですから、ALTEC604系のAlnicoマグネットモデルはいまだに中古市場でも非常に高値で取引されています。


この傾向は日本国内だけの話ではなく、海外のハイエンドマニアの中でも同様です。


音質の微妙な違いに敏感なそんな耳の肥えたハイエンドオーディオマニアや、音楽を中心とする芸術家などの中からも、Alnicoマグネットの604系の復刻を望む声がGreat Plains Audio社にも数多く寄せられたとのことです。


そこでそのような熱い要望にこたえようと、復刻生産されるのがGPA604E-Ⅱという事です。

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通常604系は中音域を中心としたかまぼこ特性になりやすく、ボリューム式アッテネーターのつまみをグリグリ動かしても、かまぼこ型の特性が上に下に移動するだけでしたが、GPA製のクロスオーバーネットワークは、そのあたりもうまく処理している様子がこの表からもわかります。


という事で、製品自体は完成しているようなのですが、発売時期や価格など、まだ詳細な情報が上がってきていません。


基本的にALTEC時代と製法などは変わりませんから、ここまで完成していれば、そう遠くない時期に購入が可能となるはずです。


ただ大きい規模の会社ではありませんので、どうしても少人数で運営している関係から、製品によっては納期に時間がかかってしまう事もあります。


いずれにしても、詳細が判明しだい、ブログやホームページ上でご紹介しますね。




さてALTEC604系のユニットは、私も個人的に好きなユニットのひとつです。


再生周波数大域は広くありませんし、下手なフルレンジユニットよりもレンジも狭いかもしれません。


しかしALTECのA5やA7がボイスオブシアターとして名を馳せたのは、映画などの場合音声再生が中心になりますけど、そこでは人の声というものの正確な再現力と質感の高さが要求されるわけで、それが結果的にアコーステック楽器などの音色の質感の高さにもつながっているわけです。


604系も基本的に振動板も磁気回路も共通で、しかも同軸構造とすることで点音源の一体感も出てきますから、ある意味大きなフルレンジユニットと同じわけですね。


音楽を聞き流しているときにはほとんど気にならない大半の大型マルチシステムも、いざ人の声を再生させてみると、テレビのスピーカーよりも表現力が乏しいものなんてたくさんあります。


そんな人の声を中心とした表現力の高さがALTECの魅力でもあり、604系の魅力でもありますね。


と話し込んでいるうちどんどん深みにはまってしまいますので、今回はここまで。


また次回楽しい話をしていきたいと思います。


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2013/02/04
13:10
ALTEC復刻版 GPA416と515を考える

みなさんこんにちは。


サムライジャパンでございます。


さて前回までは3回にわたりイギリスのアナログプレーヤーメーカである、The Funk Firm 社製のAchromatというターンテーブルマットのお話をしました。


外観上はともかくとして、手に取ると非常に軽い発泡系の樹脂を用いたそのターンテーブルマットは、比較的質量の高いメタル系のハードなターンテーブルマットを使用してきた立場からすると、こりゃ騙されたと思うほどにチープな印象のあるものでした。

それは純正などによく用いられるラバー系のゴム製のターンテーブルマットよりも軽いのではと思えるほどで、さらりと軽やかなフェルト系のように非常に軽量なターンテーブルマットです。


The Funk Firm Achromat, (thin) mat 3mm



しかしブログの中でもお話したように、今までリファレンスとして使用してきたオーディオテクニカ製のアルミ製ターンテーブルマットを秒殺してしまうほど、そのターンテーブルマットとしての実力は、今まで経験を積み上げてきた常識など役に立たないというほど大きなものでした。


私がオーディオを始めたころといえば、アナログ再生も末期に差し掛かるCDプレーヤーが世の中に出始めたころの話で、その当時のアナログプレーヤーといえば、入門用から中級者向けのものはダイレクトドライブが主流で、ベルトドライブは前時代の過去の産物的な風潮もありました。


一方ハイエンドの高級機を見てみれば、物量大量投入した金属見本市のような、一人では持ち上げられそうもないほどの巨大な金属の塊というものもよく見られ、バケツのように巨大なプラッターを糸ドライブで駆動するというものも数多く見かけましたね。


私もいつかあんな巨大な金属の塊のようなターンテーブルが欲しいと思っていたものです。


アナログ再生の場合ハウリングマージンなど、どうしても外乱に対する影響を受けやすいため、その対抗策のひとつとして巨大で高質量という方向性に走ったのでしょうけど、音質的評価などを含めた結論から言えば、巨大で重ければいいというレベルの話は、恐竜が巨大化して絶滅したように需要の減少以外にも、音質的優位性が見出せない理由からその多くが消え去りました。


そんな時代を見てきたわけですから、私も当然のごとく高硬度、高質量、高剛性の3高主義になっていたものですけど、それらが必ずしも音質向上には繋がらない事は様々な経験から理解していました。


The Funk Firm 社製のAchromatというターンテーブルマットを使ってみると、必ずしも高硬度、高質量、高剛性の3高主義が良い音の条件ではないと、その理由がよく理解できましたね。




さて今回は少数派のアナログの話ではなく、一般的なスピーカーユニットに関して、マグネットの大きさと音の傾向のお話をしたいと思います。


一般的によく聞かれる話として、巨大なマグネットで振動板を駆動するユニットは音がいいと評判になる事は多く聞かれますね。

これもある意味伝説的なお話にもなりけして間違いではないものの、実際本当なの?というオカルト的要素を含む場合も時にはあるものです。



スピーカーユニットの振動板を自動車のボディーを含めたシャーシとして捉えれば、それを駆動するマグネットはエンジンに当たります。


当然このエンジンが強力であれば車の動力性能が向上する話は理解しやすい話ですね。


これと同じ理屈で考えれば、巨大マグネットで駆動するユニットは、当然高性能スピーカーユニットとなるはずです。


しかし、どういうわけか実際音を聞いてみると、この理屈が必ずしも当てはまらない場合も見られます。


これはいったいどういうことなのでしょう。


たとえば私のところでも取り扱っているALTEC復刻版を生産している、Great Plains Audio(GPA)社製のユニットには、同じ15インチサイズの振動板を持つ、416系と515系があります。

GPA 416-8B Alnico

GPA 416-8B Alnico

GPA 416-8B Alnico




GPA 515-8C Alnico

GPA 515-8C Alnico

GPA 515-8C Alnico


ご覧のように表面上の面構えはまったく同じですし、基本フレームの形状も共通です。


ALTEC時代は時代によって振動板が共通だったり異なったり、告知されないマイナーチェンジが繰り返されていましたが、こちらは基本的に共通です。


この2つのユニットの違いといえば、ユニット後ろ側にある、振動板を駆動するアルニコマグネットの大きさの違いになります。

GPA 515-8C/16C Alnico


当然416系と515系では同じAlnico磁気回路でも、総磁束も磁束密度も異なってきますし、同じ振動板を用いていても出力音圧レベルも周波数特性も異なります。


同じ振動系を使用しているため音色傾向こそ同じですけど、聞こえてくる音は意外と大きな違いに聞こえてきます。


さてこのように2つのユニットを比較してみれば、515系の方がいかにも強力で良い音がするという印象も受けますが、事はそう単純には行かないものです。



例えて言うのなら、同じ車体に異なるパワーのエンジンを載せた車と考えてもらえばわかると思います。


標準仕様のバランスの取れたノーマル車と、ハイパワーエンジンが載せられた乗り手を選ぶチューニングカーのような関係みたいなものです。


416系が必要十分で過不足のないバランスの取れた傾向を示すのに対し、515系は、強力すぎる磁気回路が時には仇となり、中音域以上の分割振動が減衰できずに暴れてしまう事もあり、相対的に中音域の音圧に対し低音域が弱く感じられ、切れやスピードや初期初動はいいものの、低音が聞こえにくいウーハーと感じてしまう事もあります。


もちろんこれらの傾向はフレームや振動板の要素以外にも、磁気回路の設計などの要素も加わりますし、また使用するキャビネットからの影響などもあるために、簡単に結論付ける事はできません。


515系は15インチクラスのユニットとしてはかなり強力な磁気回路を持ちますが、世の中にはこれを上回るマグネットのお化けみたいなユニットだって存在します。



ではそのような強力な磁気回路を持つユニットなら音が良いのかというと・・・?



今回はじめの方に話したアナログプレーヤーの話にも共通するように、大量物量投入した金属見本市のような巨体ターンテーブルが必ずしも質の良い音がするわけではないことと同じで、意外と見掛け倒しといえる場合もあるのです。



日産にGT-Rという世界屈指の高性能車がありますが、あの車の駆動方式がFRの後輪駆動だったとしたら、とてもじゃないですがあのパワーを十分路面に伝える事ができずに、ただの暴れ馬の暴走車両になってしまいますし、4輪駆動であっても、適切な駆動配分のコントロールデバイスが介在しなければ、これまたタイヤが空回りするだけの扱えない車となってしまうでしょう。


これと同じように、スピーカーユニットも適切なバランス状態にあってこそ、音楽をバランスよく奏でる事ができるものです。


そのような意味で考えると、416系が515系よりも音が悪いとか劣るというものではなく、どのような音楽を聴きたいかによって選択するものなのかもしれません。



もちろん貧弱な磁気回路ではさすがに厳しいものがありますので、ある程度強力な磁気回路のほうが反応もよく、初期初動にも優れてきますので、入力信号に対して敏感に反応する傾向にこそなりますが、磁気回路には透磁力という要素もあり、これが悪いと見掛け倒しになる事もあります。


またいくら磁気回路が良くても、振動板がヘッポコピーで粗悪な音しか出さないという事もありますし、いかにも凄そうな巨大磁気回路がついているにもかかわらず、中には飽和状態で意味を成さないものだってあるものです。


ユニットの良し悪しの判断基準のひとつに磁気回路の優劣というのはありますが、これはある程度判断材料としては有効な基準のひとつにはなるものの、超強力な磁気回路のユニットイコール高音質なユニットとならないところが、オーディオの難しいところでもあり楽しい一面かもしれませんね。


このあたりの話をすれば尽きないのですが、今回はここまで。


また次回楽しい話をしたいと思います。


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2013/02/04
13:09
ALTEC 604同軸ユニットをショートホーンで鳴らす

みなさんこんにちは。


サムライジャパンでございます。


ブログの更新が久しくあいてしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょう。


さてALTEC604の2ウエイ同軸ユニットを、ショートフロントホーン+マルチダクト仕様のエンクロージャーで鳴らすお客様から、604シリーズ用のクロスオーバーネットワークのご注文をいただきました。

GPA N604-8A Crossover


604シリーズも生産中止になってから年月も経っていますし、素子の劣化などを考慮して、ネットワークを新たに新調するとのことでした。


そこでうちへご注文いただいたのですが、先日そのお客様へネットワークを収めたところ、お客様から試聴時の感想報告がございましたのでご紹介したいと思います。


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NW昨晩到着致しました。
早速取り付け、現在試聴しております
オリジナルNWに対し、より一層クリアーになった感じです。
ただBOXが低音ホーンですので、音声大域が少々張り出し、
その分低音が低い特性のように感じます。
これから手を加えこのBOXに合ったバランスに仕上げていきます。
まずは満足です、オリジナルはやはり回路が複雑し過ぎとパーツの
経年劣化もあるのでしょうが、今回のものと比較するとくすんで
聞こえます。
宣伝文に、徹底的にヒアリングを繰り返し決定した、とありますが
確かに良さを認めております。
広域が延びておりシンバル等の音が品よく響きます。

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今回お客様からはこちらの試聴結果のメールと共に、お客様の鳴らされていますシステムの画像も送っていただきましたので、こちらもあわせてご紹介いたします。

P1010901.jpg


P1010902.jpg


両脇のシステムはALTECの604が収められ、中央側のシステムにはTANNOYのユニットが収められ、聴かれる曲に合わせて鳴らされているそうです。


こんな素敵な聴き方もいいですね。


エンクロージャーいっぱいに広がるホーンも、ホーンロードがしっかりと掛かる感じですので、奥行き感のある深い音が聞こえそうです。


しかもマルチダクトによって、切れ味のよい低音も聞こえてきそうですね。


604の方はソニーロリンズをゴキゲンな音で楽しみたいとのことです。


ぜひ私も一度お聞かせいただきたいと思いました。


いつもうちのブログには、私のところの惨たらしいダンボールスペシャルの画像ばかりでしたから、このような素的なシステムの画像は目に眩しく映ってしまいますね。




さて今回ご注文いただいたネットワークですが、ALTECの604系によく見られるようなレベルコントロールのつまみが無いタイプをご購入いただきました。


通常はBOXに入れられ、レベルコントロールのつまみが付いたものが一般的です。

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しかしこれが意外と曲者で、コイルやコンデンサ、そして抵抗などのパーツもコスト重視の面もあり、また便利なようでも音楽信号を欠落させやすく、音質低下につながりやすいアッテネーターが付く純正のネットワークは、正直すばらしいものとはいえません。

そのためALTECユーザーやJBLユーザーの自作が得意な方であれば、純正をはるかに凌駕する高音質のネットワークを作るのは容易い話とはなるものの、工作自体は非常に簡単な作業であっても、音質をコントロールするためのノウハウや、試聴を繰り返しながらの微調整など、時間も手間も余計に掛かってしまうものですので、慣れていない方にとっては意外とハードルが高くなったりする事もあります。


その点ALTEC604系すべてに対応したGPA N604-8A Crossoverは、そのまま線をつなぐだけという簡単さです。

しかも音楽信号の情報を大きく欠落させるアッテネーターがありませんので、より瑞々しい音楽を聴く事ができます。


でも詳しい方ならピンと来る話ですが、604系は同軸型の2ウエイ構成ですので、ウーハーとホーンドライバーの組み合わせになるのですが、この2つのユニットの音圧が異なるため、ホーンの音圧レベルを下げるためにアッテネーターが付き、それを調節する事により聴感上のレベルあわせを行いますね。


しかしアッテネーターが付いていないという事は、固定抵抗によってレベルコントロールをされているのかといえば、実はそうでもありません。


これはLCR共振回路を利用したレベルコントロールが行われているのです。


この原理を16センチのフルレンジユニットを例に簡単にご紹介しますが、

$(KGrHqEOKjsE6Jkd5NF)BOoQpQP7MQ~~60_3

$(KGrHqQOKocE5s9Ypg2UBOn5q3FQhg~~60_3

ご覧のようにLCRの共振回路を入れる事により、中音域から高音域にかけて(1KHz~10KHz)のレベルが落ちているのがわかると思います。

レベルをただ下げるだけではなく、高音域はそのままでかまぼこ型になる音圧の高さを平坦に均すことにより、聴感上はより高音域まで聞き取りやすくなるため、低音域や高音域の伸びやかな音を感じやすくなるために、レンジの広い音に感じやすくもなります。


このような効果もあり、より緻密な音楽信号を聞き取りやすくなり、また音の表情も大きく変わりますので、より躍動感のある音楽再生も可能になります。


ALTEC604系をお使いになられている方で、音が少し古臭く感じたり、また伸びやかさが無く音がこもり気味に感じてしまうような場合、このネットワークは交換用にとてもお勧めできるのです。

しかもはじめからレベル合わせができていますので、604系がフルレンジユニットのように使う事もできます。

ただお使いになるエンクロージャーなどによっては、ウーハー側にインピーダンス補正回路を入れたほうが良い場合もありますが、基本的にポン付けで使用は可能です。



しかしご使用になる環境や音の好みによっては、どうしてもレベルコントロールがほしいという方もいると思います。


その場合ALTECモデル19という、一般家庭用システムに使われるネットワークという選択肢もあります。

クロス周波数は1200Hzと少し異なりますが、中音域と高音域を分けてレベルコントロールができますので、音の鮮度を優先させないのであればこちらも使用が可能です。

GPA N1200-8A Crossover




ということで、今回はお客様のすばらしいシステムをご紹介させていただきました。


私のところの実験用システムも、そろそろ形にしないといけませんね。


また次回楽しいお話をしたいと思います。


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