2024/12/05 06:45 |
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2013/05/29 16:32 |
L-Cao FA 8 |
みなさまこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さて前回は、L-Caoの16センチユニット、FA6のマイナーチェンジ版についてお話をしました。
L-Caoというブランドですが、当然の如く世界的に有名なブランドでも歴史のあるブランドでもありません。
もちろんそのようなブランドですから、国内のネットで話題になる事もなければ、オーディオ雑誌で取り上げられる事もありません。
海外のマニアの中には、振動板の開発コンセプトがP610に基づいているため、P610のコピーという認識を持つ方もいるようです。
という事で、今回もL-Caoのユニットに関してお話をしていきたいと思います。
前にもお話したように、L-Caoの開発コンセプトは、P610を超えるフルレンジユニットとして開発されました。
そのためP610に関しても、様々な検証実験を行っていたようです。
研究対象はP610以外にも、世界的に有名な高級フルレンジユニットのローサーなども、その研究対象としていたようです。
そのような研究の末、ライバルを世界の一流フルレンジユニットとして、L-Caoのフルレンジは生み出されていったのです。
黄色い振動板が特徴的なL-Caoのユニットですが、開発初期には振動板の色は黄色でもなかったし、またエッジもアコーデオン式の一般な形状のものも試作されていました。
最終的に音質向上のためにフィックスドエッジの振動板になり、またその成型も振動板の厚みを微妙に変化させるためハンドメイドになるなど、以外と手間もかかっているのです。
またこのハンドメイド制作の別な目的として、左右の音質バランスを極力排除するために、マッチングペアをとるために行っているとの事です。
この手法は一般的な量産品ではありえない方法で、超高級ユニットといわれるものがよく行う手法です。
と前置きが長くなったしまいましたが、今回のメインテーマであるL-Cao FA8のマイナーチェンジ前とマイナーチェンジ後のお話をしたいと思います。
L-Caoの最初のユニットとして登場した当初の20センチユニットです。
そしてマイナーチェンジ後です。
ご覧のよう外観上の変化はほとんど見られません。
ではマイナーチェンジ前のF特性
こちらの表は特記事項はないようですが、どうもLCR補正回路修正後のようです。
Specification:
Power : 30W
Frequency : 40~20k (see fig. 5)
Impedance : 8 Ohm
Xmax : 1.8mm
Sensitivity : 94DB
Fs : 55HZ
Res : 5.3
Qes : 0.78
Qms : 6.45
Qts : 0.69
Vas : 70L
Weight : 2.7Kg each (7kg/pair after packaging)
マイナーチェンジ後のF特性(LCR修正回路で補正後)
補正前の裸特性
もちろんで数値上のデーターだけ並べても、それが実際に音の違いとして劇的に違いを感じられるものではございませんが、常によりよい音質を求めているのです。
よく質問でこれは音がいいですか?という質問を受ける事がございますが、正直音の良し悪しの基準自体があいまいなので、単純にこれ音良いですよとはいえません。
ただL-Caoのユニットに関しては、歴代のP610の愛用者の方や、パンケーキなどのような非常に質感表現の高いフルレンジがお好きな方、またローサーのような反応の高いフルレンジをお好みの方などには、とても印象がいいユニットかもしれません。
私が好きなAudioNirvanaのユニットも、音色的には大好きであるものの、デュアルコーンの影響が音質に出てしまう傾向があるため、インパクト感を感じさせるエネルギッシュな鳴り方は楽しいのですが、時にはそこがやや煩く感じてしまう事もあるかもしれません。
そのような傾向とはわずかに方向性は異なるかもしれませんけど、より自然な表現力などを求めるには、とてもすばらしいユニットだと思います。
P610を超えるユニットを目指して開発されたL-Caoのユニットですが、その実力はかなり高いものだと思います。
うちでAudioNirvanaを鳴らしていたダンボールスペシャルも、今はP610の初期型を入れていますけど、前にもお話したように、フロントロードホーンを埋め込んだ、200リットル越えのエンクロージャーに作り変える話しは以前にもいたと思います。
本来はAudioNirvana用に考えていたのですが、P610やL-Caoの16~20センチに容易に転用できるものに改良するつもりです。
そして最近、個人的に非常に興味があるユニットがL-Caoから発売されました。
そちらについてはまた次回お話をします。
という事で今回はここまで。
また楽しいお話をしたいと思います。
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2013/05/27 00:06 |
L-Cao FA6 |
みなさまこんにちは。
サムライジャパンでございます。
前回は、P610が持つ魅力の理由のひとつに、優れた構造と形状を持つ振動板について簡単にお話しました。
今回はそんなP610繋がりで生み出されたユニットの、L-Cao FA6についてお話をしたいと思います。
今までもサムライジャパンで取り扱いをしていたバナナ色の振動板が特徴的なユニットですが、こちらは最近基本的な外観関係は共通ですが、振動板などを含め、目に見えない部分の更なる音質改善のための改良が施されたのです。
このマイナーチェンジに伴い、以前はL-Cao 6.5 Alnicoという名称だったものが、L-Cao FA6という名称に変更になりました。
以前は1ドル80円時代に、できるだけ多くの方に手に入れてもらおうと低価格を設定させていただきましたが、ここ最近の急激な円安で原価の大幅な高騰と、マイナーチェンジに伴い原価アップのため、販売価格を値上げしてしまいました。
さてL-Caoなんて何じゃそりゃ?と思われる方も多いと思いますので、ここで簡単にL-Caoの説明をしたいと思います。
L-Caoの開発者は、某メーカーで長年スピーカー関連の技術開発部門に身をおいた経験も豊富で、自ら開発する指標として、世界的にも多くのファンを持つP610の優れた再生音を目標にしました。
その振動板の優れた形状と絶妙な剛性バランスが奏でる音のすばらしさに気が付き、P610のそのすばらしい音を超えるために開発されたのが、中国に拠点を持つL-Caoのユニットなのです。
以前ブログの中でも紹介しましたが、世界的に有名なブランドでもなければ歴史のあるブランドでもありません。
おそらく多くのベテランオーディオマニアの方でも、L-Caoなんて名前を知る方はほとんどいない事でしょう。
当然雑誌で有名な評論家先生の賞賛の声もありませんし、ネットで話題になる事もありません。
でもその潜在能力は、中国製のLowther(ローサー)なんてヨーロッパで言われるなど、その潜在能力は非常に高いものなのです。
さ手今回マイナーチェンジが行われたといいましたが、旧モデルとどこがどのように変わったのか、そのあたりをお話していきたいと思います。
ご覧のように外観形状も振動板の色や顔つきも、マイナーチェンジ前を見る限り、マイナーチェンジ後とほとんど代わり映えがありません。
しかしF特やユニットのパラメーターが細部で異なります。
まずは旧モデルのf特性。
新モデルのf特性。
LCR共振回路補正後の旧モデルf特性
LCR共振回路補正後の新モデル
これだけ見ても音質に変化については説得力はありませんが、ただF特にも現れているように、聴感上のワイドレンジ感の改善が施されています。
旧モデルのスペックは
Specification:
Power : 30W
Frequency : 58~20k (see fig. 7)
Impedance : 8 Ohm
Sensitivity : 91DB
Fs : 58HZ
Qes : 0.71
Qms : 5.71
Qts : 0.63
Cms : 1.1122mm/N
Re : 6.1 Ohm
BL : 4.37T.m
Mmd : 5.31g
Mms : 6.08g
Sd : 0.0129m2
Vas : 25.7L
Weight : 1.83 each (5.5kg/pair after packaging)
新モデルのスペックは
このように旧モデルとマイナーチェンジ版では、ユニットのパラメータも微妙に異なります。
ところで一般的に奇抜とも言えるバナナ色の派手な振動板は、実はハンドメイドで作られているとのことです。
振動板のカーブ形状やコルゲーションの入れ方など、色以外P610の振動板とほとんど同じですが、よく見るとエッジ部分はフィックスドエッジで、振動板と一体の材質でできています。
一般的にフィックスドエッジのユニットといえば、機械で成型されてもエッジ部分も振動板部分も同一の材質で作られるため、その厚みも基本的に振動板と同じです。
そのため振動板がフラフラと動きにくいものが多く、切れやしまりを感じさせる切れのある音を聞かせるものの、どうしても伸びを感じさせる低音は苦手です。
そのためエッジ部分を別の材質で動きを制限しないように成型されるものが多いのです。
P610も初期型では薄いスポンジ、後期型ではロールエッジなど、製造の容易さや成型の簡単な物が使われて、生産コストを抑えたものでした。
一方L-Caoのエッジ部分は、振動板本体と微妙に厚みが異なるように成型されたものです。
これにより不必要に振動板の動きを抑制しすぎないようになるのです。
しかしそれをオートメーションの機械で成型ができないため、ハンドメイドで作られているとのことです。
機械でがんがん出来上がる低価格ので高性能なユニットができる時代、音のために製法にまで拘るというのは、時代錯誤ともいえるのでしょうけど、でも昔から評価の高いユニットは、必要以上の妥協をしていないものです。
と話が長くなってしまいましたので今回はここまで。
次回は20センチ8インチのお話をしたいと思います。
2013/05/24 02:24 |
振動板の動きは |
みなさまこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さて前回はP610復刻版のひとつである、AucharmP610Sをご紹介しました。
表向きの顔つきはP610そのものですが、強化された磁気回路や、6Nで巻かれたボイスコイルを採用するなど、オリジナルのP610から進化したバージョンとなります。
取り付け寸法などに関してはオリジナルと同一であるものの、大型化された磁気回路のヨークの関係で、ユニットの奥行き寸法は異なります。
前回のお話でもありましたが、オリジナルの最も近い復刻版であるValavP610Vは現在生産終了となってしまいましたが、同一モデルの進化改良版として、別ブランドからオリジナル寸法の復刻版が発売されています。
こちらはP610SLとして近日掲載予定です。
外観はほぼ同一ですが、このモデルも磁気回路の磁石の改良や6N銅のボイスコイルの採用など、目に見えない改良が施されたモデルとなります。
さて前回のブログでもお話しましたが、今でもこれだけP610に拘りを持つメーカーがいるのは、やはりその優れた基本設計のよさがあるからです。
その代表格といえるのが、絶妙なカーブと円状に振動板に付けられたコルゲーション模様が特徴的な振動板です。
歴代P610のオリジナルが持つアキレス腱といえるエッジ部分は改良されていますが、その基本はオリジナルのP610と同一です。
エッジや磁気回路には手を加えても、P610の持つ振動板の形状を継承しているのは、やはりそれが優れた音質を提供できる要素が大きいからです。
スピーカーの振動板といえば、ボイスコイルに信号が流れる事により磁界が発生するため、それによって発生する振動を音に変えているのは皆さんもご存知の事です。
そして振動板はボイスコイルの動きにあわせて前後にピストン運動をして、その振動が音となるのですが、これは単一な周波数の信号を流しているときの話です。
一般的に音楽などの信号を再生させれば、その周波数は様々で、しかも様々な音の信号が複雑に絡み合って再生されますので、単純にピストン運動のように、前後にストロークするというわけにはいきません。
中には振動板は単純に前後にストロークしているというイメージを持つ方もいるようで、振動板の剛性は高ければ高いほどいいと主張する方もいます。
しかしご存知のように音を再生させるといっても、その信号は単調な単一周波数の信号というわけにもいかず、様々な音色を含む幅広い周波数の合成となりますから、振動板が単調なストロークを行っていない事は容易に想像できます。
エネルギーが大きく振幅の大きい低域の信号であれば、見た目でブルブルと振動板がゆれるのは見えますけど、高音域の信号の動きなど、見た目ではわからないだけではなく、実際どのように振動しているのかさえわかりにくいほど複雑な状況です。
再生帯域が極端に狭い限られた周波数だけを再生させるのであれば、その周波数帯域を得意とする振動板を持つユニットで、的確にピストン運動させればいいのでしょうけど、再生帯域が非常に広いフルレンジユニットの場合そのようなわけにはいきません。
そのような複雑な音を再生させるために、すべての周波数の帯域をストロークだけで再生させる事は困難なため、振動板のいたるところで分割振動の発生などを利用し、どうにか再生させるのが現状となります。
そのような状況を踏まえた場合、振動板の上では周波数帯域によってはドップラー効果などが発生したり、位相のずれなどの発生もありますから、それらをばらばらな音にならないように考えて、振動板のコーンのカーブ形状や、振動板の剛性バランスなどが決められています。
そんな複雑怪奇な状況を再現する上で、P610のもつ振動板の形状は非常に優れているのです。
広帯域再生を目指し、それぞれ得意とする周波数帯域に合わせたユニットを組み合わせ、4ウエイや5ウエイといったマルチシステムを組み上げるのもオーディオの目指すひとつの方向性であるものの、各ユニットの位相のずれや音色の違いなど、一体感のある優れたまとまりを見せるシステムを構築するのは至難の業です。
もちろん2ウエイや3ウエイというシステムでも同じことで、それがゆえに音作りに迷い悩むマニアの方も少なくありません。
そのような時こそ、信頼できるまとまりの良さを誇る優れた音質を持つフルレンジユニットがあれば、音作りの参考として、または現状の問題点の洗い出しという意味でも、自分の音作りのリファレンスとして、優れた音質のフルレンジは活躍できます。
という事で今回はここまで。
また次回も楽しい話をしていきたいと思います。
2013/05/22 20:14 |
P610復刻版と発展型 |
みなさまこんにちは。
サムライジャパンでございます。
今までとロゴのタイトルが異なりますが、現在の新しいホームページのロゴとなりますので、今後こちらをごひいきにお願いします。
まだまだ未掲載のページも多くありますが、以前とはデザインも大きく変わり、新たに取り扱いが増えたブランドもございますので、お時間のあるとき是非リニューアル後のホームページをご覧ください。
上記ロゴをクリックしていただきますと、新ホームページをご覧いただけます。
さて前回のブログ更新よりだいぶ日が経ってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
前回までしばらくP610に関して書き込んできましたが、私が好きなP610は、前期型の初期バージョンで、当然新品の入手はできません。
しかも後期型でさえコンディションの良い物が少なく、中には左右で音圧が違ったり、また左右別々に入手した場合、音がまるで違うなんていうことも珍しくありません。
そうなるとどうにかして手に入れたくなるのが心情ですが、そのようなマニアの方の中には、とにかく数をそろえて、その中からベストマットングのペアを探すという兵の方さえいます。
しかし、中古とはいえ、人気商品ですからそれほど安いわけではなりませんから、結果的に数十万を注ぎ込んでなんていう話も耳にします。
そのようなわけで、現在ではP610の復刻版が登場しています。
以前も何度かご紹介しましたが、Valab P610V
この製品はP610の復刻版として、基本スペックは最終型モデルに近いものとなり、ポピュラーなP610の代替品となります。
しかしこのモデルは現在生産が完了してしまい、今後入手はできなくなります。
でも、このモデルの磁気回路を少し改良したものが、別ブランドとして生産されているので、多少価格はアップしますが、今後そちらをP610復刻版の標準モデルとして掲載予定です。
さてそんなP610関係の復刻版ですが、現在それらからの波及モデルも出てきました。
まずはAucharm P610Sです。
何だ、今までと同じP610の復刻版じゃないか。
そのように思われる方もきっと多いのではないでしょうか。
しかしよく見てみると、なにやらエッジの感じが多少色が違うとか、ちょっと違った印象もあるように思われる方もいるかもしれまん。
実はこのユニット、P610復刻版とは別物になります。
表向きの表情や、取り付け寸法のサイズなど、従来の歴代P610とまったく同じですが、実は大きな違いとして直ぐに気がつくのが、強化された磁気回路なのです。
画像はAucharm P610S
ぱっと見ただけでは気付きにくいのですが、従来のモデルと比較するとよくわかります。
画像はValab P610V
マグネットが長くなり、それに伴い磁気ヨークのサイズも拡大しています。
また外観以外にも、磁石のコバルト含有量を増やすなど、マグネットの見直しも図られています。
それ以外にも、ボイスコイルの巻き線に6N銅を採用するなど、初期初動を良くするための工夫もされています。
また表面上のエッジも改良が加えられているのです。
エッジの改良は振動版への音の影響の削減ともに、振動版の動きに対するフリクションの低減なども含まれています。
また振動板自体は基本的に共通であるものの、センターキャップなどの改良により、より繊細で伸びのある高域特性が出るように手が加えられました。
これらの改良で、基本的な能率も93dbへと向上し、より高い音圧を確保できるようになりました。
そのような改良のおかげで、従来のP610が持つ緻密で繊細な質感表現を得意とする音質に加え、力強さとワイドレンジな伸びやかさが加味され、P610を超える現代のP610といえるものです。
ここ最近は、今までのデフレや円高傾向のため、低価格で高性能ユニットが数多く市場に出回りました。
もちろんそれらの中にはすばらしい物も多くあるのですが、P610と比較してしまうとどうしても格の違いを感じてしまうものも事実です。
だからといってP610が世界一すばらしいというわけではなく、世界中の中で優れたユニットのひとつというものです。
今回ご紹介したAucharm P610Sですが、磁気回路やボイスコイル、またエッジやセンターキャップの改良や変更はあるものの、振動板自体はほとんど手を加えていません。
その大きな理由のひとつに、P610がもつ振動板の絶妙なカーブ形状があるのです。
この絶妙なコーンカーブが、P610の優れた音質の基本を成しているのも事実です。
そのためあえて振動板本体に手を加えていないのです。
何の変哲もないただの紙の振動板ですが、剛性と内部損失の絶妙なバランスの上に立っているため、きわめて高い質感表現も得意とするのです。
ただ剛性が高ければいいものではなく、内部損失が優れていればいいというわけでもなく、今まで数多くの革新的な新素材のユニットの多くが、一世を風靡しながらも短命で姿を消していった背景からも、やはり高音質で評価の高いユニットというのは、昔から変わりがないのも頷けます。
という事で今回はここまで。
以前も話しましたように、今後新たに取り扱いを始めるブランドのご紹介などを含めながら、また楽しいお話をしていきたいと思います。
2013/04/09 00:24 |
P610 再考 その7 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さてP610に関する話もだらだらと長くなってしまいましたが、具体的にどこがどういいのか?
実際所有されている方以外にとっては、古臭いボロイスピーカーにしか思えませんからね。
ところでこれは私の個人的な音の判断基準のひとつなのですが、以前にも何度か話したように入力信号に対する表現力の正確さを判断基準の大きなひとつとしています。
そのため一般的な音の良し悪しを判断するように、様々な音楽ソースを聞き比べて、低音の表現が良いとか、高音域の煌びやかさがどうとか、簡単に言えば、音が良いとか悪いとか、そのような意味での表現とは異なるかもしれません。
でも何も知らずにオーディオをはじめた頃は、ズンズンと響く低音が良いとか、スカッとした高域が良いとか、クリアーで透明感があれば良いとか、様々な音楽を聴いては音との良し悪しに関して右へ左へと好みも大きく変化していたのも事実です。
もちろんそれらもオーディオの楽しみの一つですから、そのような方向性の模索も楽しいのに変わりはないのですが、ただP610の前期型を手に入れて以来、入力信号に対する正確な再現性という観点でオーディオを捉えるようになってからは、今までアンプの選択、ケーブルの選択、スピーカーの選択といった、各種オーディオ機器の選択に関して、あまりブレる事が少なくなったのも事実です。
音源に対する忠実な再現世界を第一に考えてみると、そこには固有の個性的な色付けは極力少ないほうが良いため、場合によっては凡個性として感じられてしまい、あまり印象に残りにくい音色傾向に感じてしまう事もあるので、それが音のよさに直接感じられないという面もあります。
でもそのような癖や個性の少ない音の世界を知る事によって、個性的な音色の魅力もまたよく感じやすくなるため、それぞれの音の違う世界の楽しさも理解しやすくなるものです。
さてそんな能書きはほどほどにして、P610のお話の続きをしようと思います。
ご覧のようにボロボロのエッジは100円ショップのポリエステル100%のフェルトに張り替えて、ようやく本格的試聴が可能となりました。
本格的に聴き直してみるとやはり良いですね。
緻密で繊細な表現力の高さは、さすがといえるものです。
今までメインに鳴らしてきたAudioNirvanaだって、近年のユニットとしては類まれなるポテンシャルを秘めた高性能ユニットで、P610の後期型や最終型を凌駕する一面を見せ付けてくれましたけど、やはりP610前期型と比較すると、音色的にもやや個性的に感じる部分もあります。
たとえば人の声(家族や知人友人など、常に聞く機会の多い人の声)の再生の場合、P610前期型は本人の声に遜色ない方向性を感じるものの、それと比較すればAudioNirvanaの場合、さすがに別人とは感じませんけど、やや太い声と感じる部分や、少し若返ったからりとした印象を感じる部分もあります。
この人の声の再生を試してみるとわかりますけど、スペック的にすばらしいといえるユニットであっても、アンドロイドみたいな声だったり、野暮ったい声だったり、ギスギスした神経質な声だったり、もちろんアンプやケーブルの要素も絡んできますけど、意外と音の傾向を掴めると思ういます。
はなしはAudioNirvanaに戻しますけど、逆にこのやや個性的な傾向は、入力される音楽ソースに対して多少なりとも個性を付加させる事になり、そのため幅広い音楽ジャンルに対して、分け隔てを少なくし、音楽を楽しく聴くことができるのも事実です。
P610の後期型や最終型などに負けない解像力や分解能もあり、エネルギッシュな面ではP610以上ですから、これで音楽が楽しくないわけがありません。
しかしこれがP610の前期型となると、AudioNirvanaにパワフルさでは及ばないものの、人の声の正確な再現性はやはり格の違いを見せ付けます。
AudioNirvanaに比べると線の細さを感じますが、緻密さや繊細さはやはり一枚上手で、微細な音の違いも的確に表現する能力は非常に高く、久しぶりにP610前期型のポテンシャルの高さを感じました。
しかししばらく聴いていると、何か伸びやかさが足りないような、もっとしなやかで繊細な感じが出そうな感じもしてきました。
そこで手持ちで持っていた天然皮革のセーム革を触ってみれば、質量的にはやや重そうなものの、しなやかさと伸びのよさはフェルト以上に優れているようです。
そこで再度エッジの張替えを行う事にしました。
張り終えたばかりのエッジをバリバリと剥がし、同じようにセーム革へと張り替えてみました。
やはりといいますか、振動板を押したときの動きがよりスムーズです。
P610前期型のエッジはペラペラスカスカのスポンジで、もともと動きの対する制限も少ないものでしたから、セーム革のほうがそれに近い感じがします。
ただ経年劣化なのか、ダンパー自体の硬度がわずかに違いがあるようで、左右ベストな状態で揃えることは難しいかもしれません。
これは古いユニットの宿命で、仕方のない事かもしれませんね。
ただ汎用のサイズが合いそうなダンパーを装着するという事も十分考えられますけど、加工も面倒だし、根本的に全部バラさなければなりませんから、とりあえず安心して聴けるレベルまでの復旧にしておきます。
そして目ねじで固定していたユニットもねじ穴も加工して、爪つきナットで固定し直しました。
そしていざ試聴。
あれ?
P610ってこんな音だったかな?
P610の最終モデルを試聴したときも、こんな印象を受けました。
その時はやや期待はずれの意味でしたが、今回はまったくの逆です。
以前聴いていたとき平面バッフルでしたし、アンプも今とは違いました。
今回は140リットルのバスレフエンクロージャーですが、ダンボール製のインチキショートホーンも付いています。
簡単にバスレフポートの調整は済ませましたけど、もしかしたら今まで聴いてきたP610では最高のパフォーマンスかもしれません。
P610にこんな緻密で繊細な表現力があったのかと、今回改めて驚きました。
エッジを張り替え直後よりも、やはり多少エージングが進んできたほうがより繊細さを増していますし、音の質感表現も高くなりました。
そしてアコーステック楽器の質感表現は見事といえますね。
弦楽器、ピアノ、金管楽器に関わらず、とにかくリアルな音質です。
人の声の再現性の高さはもちろんですけど、当然ボーカルの声もすばらしいものです。
女性ボーカルの唇の動きがわかるような、演奏者の表情が見える、そんな印象にさえ感じるものです。
ホールに漂う空気の色さえ感じられる、そんな緻密で繊細な表現力もあります。
再生レンジは狭く、入力3Wという、今時ありえない低スペックのユニットですけど、それでもこれだけの表現力があるのですから、やはりその潜在能力は非常に高いものですね。
久しぶりにじっくりと聴きましたけど、やはり私の音作りの基本になっています。
もちろん大型マルチシステムのように、部屋中の空気を動かすような低音も出なければ、煌びやかで鮮やかな高域も出ません。
音がバシバシ飛んでくるような音量も絶対無理です。
でもこのキメ細やかで緻密で繊細な表現力に匹敵する音を出せるユニットって、探してみると意外と少ないと思います。
私が大型システムで、ALTECやマクソニックを使ってきたのも、やはりこのP610が持っていた高い質感表現を保ったまま、大音量とワイドレンジで楽しむためでした。
入力に対する正確な再現性。
改めてP610を聴き返すことになりましたけど、私の音作りの方向性は、やはりこれをベースにしているのは間違いないようです。
もちろん個性的な音作りもオーディオの楽しみの一つと感じるのも、やはりこれがベースにあるからかもしれませんね。
オーディオを始めたばかりの頃、どう見たって古臭いヘッポコスピーカーにしか思えなかったP610です。
振動板だってカーボンでもなければメタルでもないし、新素材とは無縁のただの紙です。
大昔のテレビやラジオの付属品のスピーカーみたいに、チープな感じが漂っています。
でもこの高い質感表現力は、やはり只者ではないようですね。
エッジがボロくなって以来、ほとんど鳴らされる事がなかったP610ですけど、改めて惚れ直しましたね。
と長くなってしまいましたので、今回はここまで。
次回からホームページリニューアルに伴い、新たに取り扱いを始めたブランドもございますので、それらも含めた話をしていきたいと思います。