2024/12/04 20:53 |
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2013/04/09 00:24 |
P610 再考 その7 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さてP610に関する話もだらだらと長くなってしまいましたが、具体的にどこがどういいのか?
実際所有されている方以外にとっては、古臭いボロイスピーカーにしか思えませんからね。
ところでこれは私の個人的な音の判断基準のひとつなのですが、以前にも何度か話したように入力信号に対する表現力の正確さを判断基準の大きなひとつとしています。
そのため一般的な音の良し悪しを判断するように、様々な音楽ソースを聞き比べて、低音の表現が良いとか、高音域の煌びやかさがどうとか、簡単に言えば、音が良いとか悪いとか、そのような意味での表現とは異なるかもしれません。
でも何も知らずにオーディオをはじめた頃は、ズンズンと響く低音が良いとか、スカッとした高域が良いとか、クリアーで透明感があれば良いとか、様々な音楽を聴いては音との良し悪しに関して右へ左へと好みも大きく変化していたのも事実です。
もちろんそれらもオーディオの楽しみの一つですから、そのような方向性の模索も楽しいのに変わりはないのですが、ただP610の前期型を手に入れて以来、入力信号に対する正確な再現性という観点でオーディオを捉えるようになってからは、今までアンプの選択、ケーブルの選択、スピーカーの選択といった、各種オーディオ機器の選択に関して、あまりブレる事が少なくなったのも事実です。
音源に対する忠実な再現世界を第一に考えてみると、そこには固有の個性的な色付けは極力少ないほうが良いため、場合によっては凡個性として感じられてしまい、あまり印象に残りにくい音色傾向に感じてしまう事もあるので、それが音のよさに直接感じられないという面もあります。
でもそのような癖や個性の少ない音の世界を知る事によって、個性的な音色の魅力もまたよく感じやすくなるため、それぞれの音の違う世界の楽しさも理解しやすくなるものです。
さてそんな能書きはほどほどにして、P610のお話の続きをしようと思います。
ご覧のようにボロボロのエッジは100円ショップのポリエステル100%のフェルトに張り替えて、ようやく本格的試聴が可能となりました。
本格的に聴き直してみるとやはり良いですね。
緻密で繊細な表現力の高さは、さすがといえるものです。
今までメインに鳴らしてきたAudioNirvanaだって、近年のユニットとしては類まれなるポテンシャルを秘めた高性能ユニットで、P610の後期型や最終型を凌駕する一面を見せ付けてくれましたけど、やはりP610前期型と比較すると、音色的にもやや個性的に感じる部分もあります。
たとえば人の声(家族や知人友人など、常に聞く機会の多い人の声)の再生の場合、P610前期型は本人の声に遜色ない方向性を感じるものの、それと比較すればAudioNirvanaの場合、さすがに別人とは感じませんけど、やや太い声と感じる部分や、少し若返ったからりとした印象を感じる部分もあります。
この人の声の再生を試してみるとわかりますけど、スペック的にすばらしいといえるユニットであっても、アンドロイドみたいな声だったり、野暮ったい声だったり、ギスギスした神経質な声だったり、もちろんアンプやケーブルの要素も絡んできますけど、意外と音の傾向を掴めると思ういます。
はなしはAudioNirvanaに戻しますけど、逆にこのやや個性的な傾向は、入力される音楽ソースに対して多少なりとも個性を付加させる事になり、そのため幅広い音楽ジャンルに対して、分け隔てを少なくし、音楽を楽しく聴くことができるのも事実です。
P610の後期型や最終型などに負けない解像力や分解能もあり、エネルギッシュな面ではP610以上ですから、これで音楽が楽しくないわけがありません。
しかしこれがP610の前期型となると、AudioNirvanaにパワフルさでは及ばないものの、人の声の正確な再現性はやはり格の違いを見せ付けます。
AudioNirvanaに比べると線の細さを感じますが、緻密さや繊細さはやはり一枚上手で、微細な音の違いも的確に表現する能力は非常に高く、久しぶりにP610前期型のポテンシャルの高さを感じました。
しかししばらく聴いていると、何か伸びやかさが足りないような、もっとしなやかで繊細な感じが出そうな感じもしてきました。
そこで手持ちで持っていた天然皮革のセーム革を触ってみれば、質量的にはやや重そうなものの、しなやかさと伸びのよさはフェルト以上に優れているようです。
そこで再度エッジの張替えを行う事にしました。
張り終えたばかりのエッジをバリバリと剥がし、同じようにセーム革へと張り替えてみました。
やはりといいますか、振動板を押したときの動きがよりスムーズです。
P610前期型のエッジはペラペラスカスカのスポンジで、もともと動きの対する制限も少ないものでしたから、セーム革のほうがそれに近い感じがします。
ただ経年劣化なのか、ダンパー自体の硬度がわずかに違いがあるようで、左右ベストな状態で揃えることは難しいかもしれません。
これは古いユニットの宿命で、仕方のない事かもしれませんね。
ただ汎用のサイズが合いそうなダンパーを装着するという事も十分考えられますけど、加工も面倒だし、根本的に全部バラさなければなりませんから、とりあえず安心して聴けるレベルまでの復旧にしておきます。
そして目ねじで固定していたユニットもねじ穴も加工して、爪つきナットで固定し直しました。
そしていざ試聴。
あれ?
P610ってこんな音だったかな?
P610の最終モデルを試聴したときも、こんな印象を受けました。
その時はやや期待はずれの意味でしたが、今回はまったくの逆です。
以前聴いていたとき平面バッフルでしたし、アンプも今とは違いました。
今回は140リットルのバスレフエンクロージャーですが、ダンボール製のインチキショートホーンも付いています。
簡単にバスレフポートの調整は済ませましたけど、もしかしたら今まで聴いてきたP610では最高のパフォーマンスかもしれません。
P610にこんな緻密で繊細な表現力があったのかと、今回改めて驚きました。
エッジを張り替え直後よりも、やはり多少エージングが進んできたほうがより繊細さを増していますし、音の質感表現も高くなりました。
そしてアコーステック楽器の質感表現は見事といえますね。
弦楽器、ピアノ、金管楽器に関わらず、とにかくリアルな音質です。
人の声の再現性の高さはもちろんですけど、当然ボーカルの声もすばらしいものです。
女性ボーカルの唇の動きがわかるような、演奏者の表情が見える、そんな印象にさえ感じるものです。
ホールに漂う空気の色さえ感じられる、そんな緻密で繊細な表現力もあります。
再生レンジは狭く、入力3Wという、今時ありえない低スペックのユニットですけど、それでもこれだけの表現力があるのですから、やはりその潜在能力は非常に高いものですね。
久しぶりにじっくりと聴きましたけど、やはり私の音作りの基本になっています。
もちろん大型マルチシステムのように、部屋中の空気を動かすような低音も出なければ、煌びやかで鮮やかな高域も出ません。
音がバシバシ飛んでくるような音量も絶対無理です。
でもこのキメ細やかで緻密で繊細な表現力に匹敵する音を出せるユニットって、探してみると意外と少ないと思います。
私が大型システムで、ALTECやマクソニックを使ってきたのも、やはりこのP610が持っていた高い質感表現を保ったまま、大音量とワイドレンジで楽しむためでした。
入力に対する正確な再現性。
改めてP610を聴き返すことになりましたけど、私の音作りの方向性は、やはりこれをベースにしているのは間違いないようです。
もちろん個性的な音作りもオーディオの楽しみの一つと感じるのも、やはりこれがベースにあるからかもしれませんね。
オーディオを始めたばかりの頃、どう見たって古臭いヘッポコスピーカーにしか思えなかったP610です。
振動板だってカーボンでもなければメタルでもないし、新素材とは無縁のただの紙です。
大昔のテレビやラジオの付属品のスピーカーみたいに、チープな感じが漂っています。
でもこの高い質感表現力は、やはり只者ではないようですね。
エッジがボロくなって以来、ほとんど鳴らされる事がなかったP610ですけど、改めて惚れ直しましたね。
と長くなってしまいましたので、今回はここまで。
次回からホームページリニューアルに伴い、新たに取り扱いを始めたブランドもございますので、それらも含めた話をしていきたいと思います。
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