2024/12/04 08:01 |
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2013/02/04 13:07 |
LCR共振回路とクロスオーバーネットワーク |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
前回のブログの書き込みから少し日が開いてしまいましたが、連日のロンドンオリンピックのように元気ですごしておりました。
さて今回はLCRネットワークにまつわるお話をしたいと思います。
私がまだ高校生のころ、まだオーディオにはそれ程強い関心があるほどではなく、当時はバイクに夢中でいたころの話です。
クラスメイトの中に自称オーディオマニアという同級生がいて、その友人宅に遊びに行ったときのことです。
友人の部屋には自慢のステレオが置いてあり、当時まだステレオなんて持っていなかった私にとっいて未知の物でした。
その友人がスピーカーに付いたつまみをぐるぐると回していたので、何も知らない私は友人に尋ねたのです。
「何してるの?」
こう尋ねた私に対し、友人は自信満々なドヤ顔で答えたのです。
「スピーカーのチューニングをしているのさ!」
当時は何の話かわからない私はただ聞いているだけでしたが、今思えばアッテネーターのつまみを動かしていただけの話です。
2ウエイや3ウエイの場合ユニット間の能率の違いもあって、昔のスピーカーの多くにはアッテネーターが付いたものが多かったと思います。
でも最近はこのアッテネーターが付いていないモデルが多くなりました。
理由はひじょうに簡単です。
このアッテネータが音楽信号に悪影響がとても大きく、音を劣化させやすいのです。
そのような事もあり、最近は音質劣化を避けるため、アッテネーターの付いていないモデルが主流となったわけです。
しかしミッドレンジやハイレンジにホーンドライバーやホーントゥイーターを繋ぐ場合、どうしてもその能率が高いため、音圧レベルを合わせる意味でどうしても必要になります。
さて先日はお客様からご注文をいただいていた、ALTEC 604系のクロスーバーネットワークがアメリカから到着いたしました。
メーカーはALTECの生産設備をそっくり引き継いだGreat Plains Audio社の製品です。
ALTEC604系といえば、同軸2ウエイのユニットとして、未だにひじょうに人気の高いモデルですね。
ALTECの純正ネットワークには、画像にもあるように音圧レベルをあわせるためのアッテネーターが付いていました。
しかしこの純正ネットワーク、正直音質的にはあまり感心できる音がしないのも事実です。
たとえばP.AUDIOの同軸2ウエイユニットの裸特性を見てもらうとよく分かるのですが、赤線で描かれたホーントゥイーターのF特性はかまぼこ型であり、しかも青のウーハーよりも音圧が高いのがよく分かります。
ALTECの604系も基本的に同じような感じになります。
たとえばアッテネーターで調節をするとどうなるかといえば、このかまぼこ型の特性がそのまま低くなるのです。
しかしこのかまぼこ型の特性の場合、聴感上音圧の高いところの音がよく聞こえるわけですので、ハイエンドの高音域の伸びを感じにくく、スーパートゥイーターを付けたいと思うかもしれません。
これは定抵抗型、トランス型で音圧を調整しても基本的に同じなのですが、じつはLCR共振回路を用いる事により、このかまぼこ型の音圧を落としたい部分だけ平らに均すことが可能なのです。
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これはL. Cao 6.5" inch Alnicoを例にお話をすれば、たとえばフルレンジユニットでも高音域などの音圧が少し高めのものも中にはあります。
このようなものもLCR共振回路を用いて、その落としたい部分だけを綺麗に均すことが可能になります。
このLCR回路のコイル、コンデンサ、抵抗の値を変更する事により、コントロールしたい周波数や減衰量を調節する事ができます。
TADのユニットを用いたエクスクルーシブの2ウエイモニターがありましたが、これなども高音域のドライバーの特性をフラットに均して、音圧を合わせると同時に20KHzまできっちり特性を伸ばせるようにするため、クロスオーバーネットワークの中にこのLCR共振回路が組み込まれているのです。
これによりかまぼこ型の耳に付きやすい周波数の音圧を押さえ、音圧が低くて聞こえにくくなる高音域にレベルも合いやすくなるため、2インチという大口径のドライバーを用いながら、2ウエイの構成でも聴感上高音域まできっちり伸びた特性を実現する事が可能です。
またアッテネーターの必要がないため、音楽信号の損失も少なく音質的に優れているのです。
じつはGreat Plains Audio社が作るALTEC604系ユニット用のネットワークも、この音質を悪化させる要素が高いアッテネーターを排除し、しかも604系のユニットをフルレンジのように鳴らすことができるように、クロスオーバーネットワークにLCRの共振回路が組み込まれています。
これにより、ALTECの純正ネットワークに比べアッテネーターが無い分音質的に優れているだけではなく、聴感上も高音域の伸びを感じやすいなど、ALTECの604系の純正代替品というより、オリジナルよりもハイクォリティーな音質が得られるため、グレードアップ品として考えてもいいかもしれませんね。
604系の純正ネットワークの場合、高域の伸びが感じにくくナローレンジに聞こえますので、なんとなく古臭い音質に感じやすくなります。
それがオリジナルの味だとお考えの方にはお勧めはできませんけど、ユニットの能力を最大限に引き出してみたい方にはお勧めできるもんかもしれませんね。
しかも同軸2ウエイでありながら、まるでフルレンジユニットのように扱えるなど、意外と使いやすくなるのもメリットかもしれませんね。
ちなみにGreat Plains Audio社現在生産する604系の復刻版ユニットも、このクロスオーバーネットワークがはじめから付属していますので、その使い勝手はフルレンジユニットとほとんど同じです。
さてこのクロスオーバーネットワークは、Great Plains Audio社が作るALTEC604系復刻版だけではなく、ALTEC604シリーズのグレードアップ用のネットワークとしても対応可能な製品なのです。
はじめの方にも話しましたが、このネットワーク内に組まれたLCR共振回路ですが、本来なら複雑な計算式の説明など必要ですけど、説明だけでかなりのボリュームにもなりますので割愛させていただきますが、音質的な悪影響が少ない方法のひとつですので、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
もちろんぐりぐりとツマミを回すのが至上の喜びと感じるマニアの方にはお勧めできない事ですけどね。
さて今回はここまで。
また楽しい話をしたいと思います。
サムライジャパンでございます。
前回のブログの書き込みから少し日が開いてしまいましたが、連日のロンドンオリンピックのように元気ですごしておりました。
さて今回はLCRネットワークにまつわるお話をしたいと思います。
私がまだ高校生のころ、まだオーディオにはそれ程強い関心があるほどではなく、当時はバイクに夢中でいたころの話です。
クラスメイトの中に自称オーディオマニアという同級生がいて、その友人宅に遊びに行ったときのことです。
友人の部屋には自慢のステレオが置いてあり、当時まだステレオなんて持っていなかった私にとっいて未知の物でした。
その友人がスピーカーに付いたつまみをぐるぐると回していたので、何も知らない私は友人に尋ねたのです。
「何してるの?」
こう尋ねた私に対し、友人は自信満々なドヤ顔で答えたのです。
「スピーカーのチューニングをしているのさ!」
当時は何の話かわからない私はただ聞いているだけでしたが、今思えばアッテネーターのつまみを動かしていただけの話です。
2ウエイや3ウエイの場合ユニット間の能率の違いもあって、昔のスピーカーの多くにはアッテネーターが付いたものが多かったと思います。
でも最近はこのアッテネーターが付いていないモデルが多くなりました。
理由はひじょうに簡単です。
このアッテネータが音楽信号に悪影響がとても大きく、音を劣化させやすいのです。
そのような事もあり、最近は音質劣化を避けるため、アッテネーターの付いていないモデルが主流となったわけです。
しかしミッドレンジやハイレンジにホーンドライバーやホーントゥイーターを繋ぐ場合、どうしてもその能率が高いため、音圧レベルを合わせる意味でどうしても必要になります。
さて先日はお客様からご注文をいただいていた、ALTEC 604系のクロスーバーネットワークがアメリカから到着いたしました。
メーカーはALTECの生産設備をそっくり引き継いだGreat Plains Audio社の製品です。
ALTEC604系といえば、同軸2ウエイのユニットとして、未だにひじょうに人気の高いモデルですね。
ALTECの純正ネットワークには、画像にもあるように音圧レベルをあわせるためのアッテネーターが付いていました。
しかしこの純正ネットワーク、正直音質的にはあまり感心できる音がしないのも事実です。
たとえばP.AUDIOの同軸2ウエイユニットの裸特性を見てもらうとよく分かるのですが、赤線で描かれたホーントゥイーターのF特性はかまぼこ型であり、しかも青のウーハーよりも音圧が高いのがよく分かります。
ALTECの604系も基本的に同じような感じになります。
たとえばアッテネーターで調節をするとどうなるかといえば、このかまぼこ型の特性がそのまま低くなるのです。
しかしこのかまぼこ型の特性の場合、聴感上音圧の高いところの音がよく聞こえるわけですので、ハイエンドの高音域の伸びを感じにくく、スーパートゥイーターを付けたいと思うかもしれません。
これは定抵抗型、トランス型で音圧を調整しても基本的に同じなのですが、じつはLCR共振回路を用いる事により、このかまぼこ型の音圧を落としたい部分だけ平らに均すことが可能なのです。
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これはL. Cao 6.5" inch Alnicoを例にお話をすれば、たとえばフルレンジユニットでも高音域などの音圧が少し高めのものも中にはあります。
このようなものもLCR共振回路を用いて、その落としたい部分だけを綺麗に均すことが可能になります。
このLCR回路のコイル、コンデンサ、抵抗の値を変更する事により、コントロールしたい周波数や減衰量を調節する事ができます。
TADのユニットを用いたエクスクルーシブの2ウエイモニターがありましたが、これなども高音域のドライバーの特性をフラットに均して、音圧を合わせると同時に20KHzまできっちり特性を伸ばせるようにするため、クロスオーバーネットワークの中にこのLCR共振回路が組み込まれているのです。
これによりかまぼこ型の耳に付きやすい周波数の音圧を押さえ、音圧が低くて聞こえにくくなる高音域にレベルも合いやすくなるため、2インチという大口径のドライバーを用いながら、2ウエイの構成でも聴感上高音域まできっちり伸びた特性を実現する事が可能です。
またアッテネーターの必要がないため、音楽信号の損失も少なく音質的に優れているのです。
じつはGreat Plains Audio社が作るALTEC604系ユニット用のネットワークも、この音質を悪化させる要素が高いアッテネーターを排除し、しかも604系のユニットをフルレンジのように鳴らすことができるように、クロスオーバーネットワークにLCRの共振回路が組み込まれています。
これにより、ALTECの純正ネットワークに比べアッテネーターが無い分音質的に優れているだけではなく、聴感上も高音域の伸びを感じやすいなど、ALTECの604系の純正代替品というより、オリジナルよりもハイクォリティーな音質が得られるため、グレードアップ品として考えてもいいかもしれませんね。
604系の純正ネットワークの場合、高域の伸びが感じにくくナローレンジに聞こえますので、なんとなく古臭い音質に感じやすくなります。
それがオリジナルの味だとお考えの方にはお勧めはできませんけど、ユニットの能力を最大限に引き出してみたい方にはお勧めできるもんかもしれませんね。
しかも同軸2ウエイでありながら、まるでフルレンジユニットのように扱えるなど、意外と使いやすくなるのもメリットかもしれませんね。
ちなみにGreat Plains Audio社現在生産する604系の復刻版ユニットも、このクロスオーバーネットワークがはじめから付属していますので、その使い勝手はフルレンジユニットとほとんど同じです。
さてこのクロスオーバーネットワークは、Great Plains Audio社が作るALTEC604系復刻版だけではなく、ALTEC604シリーズのグレードアップ用のネットワークとしても対応可能な製品なのです。
はじめの方にも話しましたが、このネットワーク内に組まれたLCR共振回路ですが、本来なら複雑な計算式の説明など必要ですけど、説明だけでかなりのボリュームにもなりますので割愛させていただきますが、音質的な悪影響が少ない方法のひとつですので、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
もちろんぐりぐりとツマミを回すのが至上の喜びと感じるマニアの方にはお勧めできない事ですけどね。
さて今回はここまで。
また楽しい話をしたいと思います。
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2013/02/04 12:12 |
オーディオケーブルのお話 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
前回までははAudioNirvanaのフルレンジユニットの話をしましたが、スピーカーを鳴らすためにも、またオーディオの信号を伝達するためにも、必ず必要になるのがオーディオケーブルですね。
ところで皆さんはどのようなケーブルを愛用されているでしょうか?
ホームセンターでも買える安価なケーブルから、10万円/m超えの超高級ケーブルまで、世の中にはたくさんのオーディオ用ケーブルが存在します。
今回はそんなオーディオには欠かせないケーブルについて少しお話をしたいと思います。
アンプとCDプレーヤーを繋いだり、アンプとスピーカーを繋ぐために必要不可欠なケーブルですが、世の中にこれだけの種類があるとどれを買えばいいのか迷われる事も多いのではないでしょうか。
実際すべてを試聴して選んでいけばいいのですが、1メートル数十円や数百円のケーブルならたくさん買い込んで比較試聴もできますけど、意外とどんぐりの背比べみたいなところもありますし、かといって1メートル数万円もするような高額ケーブルは簡単には買えません。
そうなれば雑誌などの評価記事を読んで参考にしたり、マニア同士の情報交換の場などで噂にあがる評判を参考にしたりと、なかなかこのジャンルも悩みが尽きない世界ですね。
もちろんなかにはケーブルなんかでそんなに音は違わないだろうという方もいれば、ほんのわずかな長さの違いで、音の違いに敏感に反応する人もいます。
「小生は○○の奏でる○○の音に陶酔しているぅ~!」
と現状の音に十分満足されている方には必要ない話ですが、常に音質を改善しようと日々努力されている方にとっては、このケーブルの変更は非常に重要なチューニングのひとつかもしれませんね。
さて私はといえば、ケーブルで音が大幅に変わるのは十分承知しています。
素線の材質や絶縁体の材質、またケーブルの構造などによって、それぞれ固有の傾向の音があるのも事実です。
もちろんそのような細かい変化が感じられない、聴き取れないという方がいたとしても、それはけして異常な事でも悪い事でもなく、各個人ごとに異なる感性があるための話ですから、ケーブルの違いによる必要性の要求度合いの違いでしかない事です。
たとえばスピーカーケーブルを見ても、通常の平行線もあれば、4芯のスターカッド構造、同軸構造、リッツ線構造など、それぞれ素線の材質や絶縁体の材質、それに太さなどの違いで数多い製品が世の中にはございます。
これらはそれぞれ解決すべき目的や目標があって生み出されたスタイルです。
しかも素線による音の傾向や構造による音の傾向、また絶縁体による音の傾向など、それぞれ様々な音質傾向があります。
その中から自分好みのケーブルを探すのですから、これも至難の業といえるかもしれませんね。
仕方なく雑誌の評価記事を参考に買ってみたものの・・・
「だまされたぁぁぁ~」
となる事も・・・
さて私が使用しているケーブルですが、実はもう20年以上の長きに渡り基本的に変更していません。
途中で新しく買い換えたりした事もありますが、その間同じブランド同じ銘柄で一切変更していません。
理由は単純な話ですが、私が求める方向性でこれ以上の新製品が存在しないからです。
もちろん今までにも様々なケーブルを比較試聴しましたし、1メートル10万円以上もするような、水道ホースみたいな極太の超高額ケーブルなども比較試聴しました。
そのような経歴はあるものの、やはり求める方向性と大きく異なると理由で、現在使用中のケーブルから変更を行っていないだけです。
世界中の各メーカーからは斬新なアイデアや様々な技術を投入したケーブルも日々生み出されていますけど、ただ単純に自分が求めるものに出会っていないだけなのです。
皆さんはどのようにしてオーディオケーブルの良し悪しを決めているでしょうか?
一般的にはお気に入りの音楽をかけて、その中でも自分が最も心地よい音を出すものを良い音として決め、自分の好み以外のものを悪い音として決めていると思います。
もちろんこのような試聴による選別は間違いではありません。
オーディオマニアの方の中にはこの方法を選別の基準にされている方もいると思いますが、私は基本的に聞きなれた人の声を基準として選別します。
自分の声を自分で聞いても判りませんが、自分の声を他人に聞いてもらったり、あるいは親しい家族や友人知人の声を再生して確認したりする方法です。
この方法で何がわかるかといえば、ケーブルが持つ音色の傾向がリアルに判別しやすいのです。
私はこの方法を元にオーディオ製品全般の選択をしました。
マイクやスピーカーなどの音質傾向や癖はあるとはいえ、それを差し引いてもケーブルやアンプの音色の傾向が如実に現れやすく、しかも普段聞きなれた声ですからその傾向を掴むのも容易いのです。
その中で単純に最も色づけ傾向の少ないアンプやケーブルを選んだだけです。
その方法で選んだケーブルとは、RCAコードはモガミ電線の2803、スピーカーケーブルは同じく2804という型式のケーブルです。
かつてはたまにオーディオ雑誌にも載ることもありましたけど、今では噂にさえあがりませんので、多くの方はご存じないケーブルかもしれません。
基本的に外径は同じで、構造的には中空同軸構造のケーブルです。
上の画像はスピーカーケーブルのモガミ2804になりますが、参考までにオーディオテクニカのRCAケーブルと並べてみましたが、その細さに驚かれる方も多いのではないでしょうか。
この細さ、極太ケーブルが高額高級品の代名詞のケーブルの世界ではインパクトが弱すぎますから、外観上の印象がよくないだけではなく、友人知人にも自慢さえできません。
それに値段の割りに見た目が貧弱ですから、購入後の所有感を満たす事もありません。
しかもRCAケーブルの2803もそうですが、実はこれだけ細いのもかかわらず、外皮や内部の絶縁体は非常に硬質なため、小さなアールで曲げる事ができませんから、使い勝手も非常に悪い製品です。
ケーブルの構造は中空同軸という形状で、簡単に言えば外側と内側の素線が一本一本横一列に並んだ中空構造で、極端な話薄い銅箔を筒状にしたものが入っているような感じです。
ご存知の方もいると思いますが、オーディオの信号は様々な周波数の合成です。
そこに表皮効果という現象がおきます。
これはケーブルの断面積を思い浮かべてもらえば判るのですが、周波数が高くなればなるほどその信号は断面の中心を流れにくく、外側の外皮近くに集中しやすくなるのです。
つまり太いケーブルの中心も外皮付近も、低い周波数は流れるのですが、高い周波数は外皮周辺のごくわずかな断面しか流れないのです。
そのため単純な発想で言えば、太いケーブルほど低い周波数の信号には有利で、高音域はエネルギーが落ちていくハイ落ちの傾向を示します。
これは太いケーブルほど表面積に対して断面積の割合が大きくなるからです。
そのような問題を解決するために、世の中には薄い銅箔状のケーブルが存在するというのも、この表皮効果を避けるため、表面積に対する断面積の割合の増加を抑える目的があるからです。
さてそのモガミのケーブルですが、外径が細いだけにとどまらず、表皮効果によるハイ落ちを避けるために表面積に対して断面積を抑えるために素線一本一本が非常に細く、その加工自体も非常に神経を使います。
外皮を剥くにも一苦労で、中の素線にカッターの刃などが触れるとすぐに断線してしまい易く、ただでさえ細いケーブルのため、その素線1本の欠落も音に影響が出てしまいやすいのです。
ご覧のように外側の線は横一列に綺麗に絶縁体に巻きつけられた構造です。
中の素線も中心にある絶縁体に横一列に巻きつけられている中空同軸構造です。
一般的な同軸ケーブルの場合、中心線は撚り線になっている場合が多く、外側は編み線というのも多く見られます。
しかしこのように極薄の中空同軸構造というのは非常に珍しい形状です。
最近知りましたが、RCAケーブルの2803は、ドイツのオーディオ雑誌のRCAケーブルの原器として認定されているそうです。
さて音の傾向ですが、例の人の声の実験から判断すれば、圧倒的に色づけが少なく、クリアーで透明感が高く、音の解像度も非常に高く、超ハイスピードな信号の伝達という感じです。
そのため巷で言われるような低音の締りとか、音場感の再現とか、輝くような色艶とか、そのような表現とは異なる次元の音質になります。
そのような理由で現在もこれを超えるケーブルに遭遇していないために変更していないのですが、このケーブルを多くの方にお勧めできるかといえば、それはまた難しい話といえるでしょう。
まず通常のケーブルと異なり、ハイ落ち傾向を示さないため、バランス的に高音域が強いと感じる場合もあるでしょうし、非常にハイスピードな低音を再生するのですが、それが低音の量感がないとか低音域が不足気味として感じられる事もあり、そのような意味では一般的に聞き馴染んだケーブルとはバランス的に異なって聞こえやすい場合があります。
またケーブルも非常に細いため、特にスピーカーケーブルなどインピーダンスの低い信号のやり取りなどの場合、長さがもろの影響を与えやすいため、スピーカーの近くにアンプを設置する必要性もあります。
先ほどのように加工も非常に困難で、曲げなどにも非常にやりにくいケーブルですので、使用上非常に神経質で使いにくいものです。
音楽ソースやプレーヤー、アンプなどの音もストレートに表現してしまい、組み合わせによっては粗ばかりが目立ち易くなることもあり、必ずしもそれがいい音であるとは限らないのです。
逆に一般的に販売されているケーブルの多くは、様々なアイディアを盛り込まれ、そのような細かい影響を受けにくいように音作りされている場合も多く、その音が好みの音であるのならそちらを使用するほうが賢明です。
そのようなわけでアンプもケーブルもずっと同じものを使用してきているわけですが、これはあくまでもストレートにできるだけ色付けを排除した音楽を聴きたいためという理由であって、絶対これが最高だなんていう話ではありません。
世の中に様々な音を奏でるオーディオ装置が日々生み出されるのも、それだけ多様した音の好みがあるからですので、その中から自分の好みを見つけ出し、そして育てていくものではないでしょうか。
そのような音の傾向を掴むためにも、一度聞きなれた人の声を利用してみるのもひとつの手です。
そしてその好みの傾向が見つかると、おのずとそのような音作りも容易くなります。
その音作りのひとつとして、ケーブルを変えて作り上げるのもまた楽しいものですね。
と話が長くなってしまいますので今回はここまで。
また次回楽しい話をしていきたいと思います。
サムライジャパンでございます。
前回までははAudioNirvanaのフルレンジユニットの話をしましたが、スピーカーを鳴らすためにも、またオーディオの信号を伝達するためにも、必ず必要になるのがオーディオケーブルですね。
ところで皆さんはどのようなケーブルを愛用されているでしょうか?
ホームセンターでも買える安価なケーブルから、10万円/m超えの超高級ケーブルまで、世の中にはたくさんのオーディオ用ケーブルが存在します。
今回はそんなオーディオには欠かせないケーブルについて少しお話をしたいと思います。
アンプとCDプレーヤーを繋いだり、アンプとスピーカーを繋ぐために必要不可欠なケーブルですが、世の中にこれだけの種類があるとどれを買えばいいのか迷われる事も多いのではないでしょうか。
実際すべてを試聴して選んでいけばいいのですが、1メートル数十円や数百円のケーブルならたくさん買い込んで比較試聴もできますけど、意外とどんぐりの背比べみたいなところもありますし、かといって1メートル数万円もするような高額ケーブルは簡単には買えません。
そうなれば雑誌などの評価記事を読んで参考にしたり、マニア同士の情報交換の場などで噂にあがる評判を参考にしたりと、なかなかこのジャンルも悩みが尽きない世界ですね。
もちろんなかにはケーブルなんかでそんなに音は違わないだろうという方もいれば、ほんのわずかな長さの違いで、音の違いに敏感に反応する人もいます。
「小生は○○の奏でる○○の音に陶酔しているぅ~!」
と現状の音に十分満足されている方には必要ない話ですが、常に音質を改善しようと日々努力されている方にとっては、このケーブルの変更は非常に重要なチューニングのひとつかもしれませんね。
さて私はといえば、ケーブルで音が大幅に変わるのは十分承知しています。
素線の材質や絶縁体の材質、またケーブルの構造などによって、それぞれ固有の傾向の音があるのも事実です。
もちろんそのような細かい変化が感じられない、聴き取れないという方がいたとしても、それはけして異常な事でも悪い事でもなく、各個人ごとに異なる感性があるための話ですから、ケーブルの違いによる必要性の要求度合いの違いでしかない事です。
たとえばスピーカーケーブルを見ても、通常の平行線もあれば、4芯のスターカッド構造、同軸構造、リッツ線構造など、それぞれ素線の材質や絶縁体の材質、それに太さなどの違いで数多い製品が世の中にはございます。
これらはそれぞれ解決すべき目的や目標があって生み出されたスタイルです。
しかも素線による音の傾向や構造による音の傾向、また絶縁体による音の傾向など、それぞれ様々な音質傾向があります。
その中から自分好みのケーブルを探すのですから、これも至難の業といえるかもしれませんね。
仕方なく雑誌の評価記事を参考に買ってみたものの・・・
「だまされたぁぁぁ~」
となる事も・・・
さて私が使用しているケーブルですが、実はもう20年以上の長きに渡り基本的に変更していません。
途中で新しく買い換えたりした事もありますが、その間同じブランド同じ銘柄で一切変更していません。
理由は単純な話ですが、私が求める方向性でこれ以上の新製品が存在しないからです。
もちろん今までにも様々なケーブルを比較試聴しましたし、1メートル10万円以上もするような、水道ホースみたいな極太の超高額ケーブルなども比較試聴しました。
そのような経歴はあるものの、やはり求める方向性と大きく異なると理由で、現在使用中のケーブルから変更を行っていないだけです。
世界中の各メーカーからは斬新なアイデアや様々な技術を投入したケーブルも日々生み出されていますけど、ただ単純に自分が求めるものに出会っていないだけなのです。
皆さんはどのようにしてオーディオケーブルの良し悪しを決めているでしょうか?
一般的にはお気に入りの音楽をかけて、その中でも自分が最も心地よい音を出すものを良い音として決め、自分の好み以外のものを悪い音として決めていると思います。
もちろんこのような試聴による選別は間違いではありません。
オーディオマニアの方の中にはこの方法を選別の基準にされている方もいると思いますが、私は基本的に聞きなれた人の声を基準として選別します。
自分の声を自分で聞いても判りませんが、自分の声を他人に聞いてもらったり、あるいは親しい家族や友人知人の声を再生して確認したりする方法です。
この方法で何がわかるかといえば、ケーブルが持つ音色の傾向がリアルに判別しやすいのです。
私はこの方法を元にオーディオ製品全般の選択をしました。
マイクやスピーカーなどの音質傾向や癖はあるとはいえ、それを差し引いてもケーブルやアンプの音色の傾向が如実に現れやすく、しかも普段聞きなれた声ですからその傾向を掴むのも容易いのです。
その中で単純に最も色づけ傾向の少ないアンプやケーブルを選んだだけです。
その方法で選んだケーブルとは、RCAコードはモガミ電線の2803、スピーカーケーブルは同じく2804という型式のケーブルです。
かつてはたまにオーディオ雑誌にも載ることもありましたけど、今では噂にさえあがりませんので、多くの方はご存じないケーブルかもしれません。
基本的に外径は同じで、構造的には中空同軸構造のケーブルです。
上の画像はスピーカーケーブルのモガミ2804になりますが、参考までにオーディオテクニカのRCAケーブルと並べてみましたが、その細さに驚かれる方も多いのではないでしょうか。
この細さ、極太ケーブルが高額高級品の代名詞のケーブルの世界ではインパクトが弱すぎますから、外観上の印象がよくないだけではなく、友人知人にも自慢さえできません。
それに値段の割りに見た目が貧弱ですから、購入後の所有感を満たす事もありません。
しかもRCAケーブルの2803もそうですが、実はこれだけ細いのもかかわらず、外皮や内部の絶縁体は非常に硬質なため、小さなアールで曲げる事ができませんから、使い勝手も非常に悪い製品です。
ケーブルの構造は中空同軸という形状で、簡単に言えば外側と内側の素線が一本一本横一列に並んだ中空構造で、極端な話薄い銅箔を筒状にしたものが入っているような感じです。
ご存知の方もいると思いますが、オーディオの信号は様々な周波数の合成です。
そこに表皮効果という現象がおきます。
これはケーブルの断面積を思い浮かべてもらえば判るのですが、周波数が高くなればなるほどその信号は断面の中心を流れにくく、外側の外皮近くに集中しやすくなるのです。
つまり太いケーブルの中心も外皮付近も、低い周波数は流れるのですが、高い周波数は外皮周辺のごくわずかな断面しか流れないのです。
そのため単純な発想で言えば、太いケーブルほど低い周波数の信号には有利で、高音域はエネルギーが落ちていくハイ落ちの傾向を示します。
これは太いケーブルほど表面積に対して断面積の割合が大きくなるからです。
そのような問題を解決するために、世の中には薄い銅箔状のケーブルが存在するというのも、この表皮効果を避けるため、表面積に対する断面積の割合の増加を抑える目的があるからです。
さてそのモガミのケーブルですが、外径が細いだけにとどまらず、表皮効果によるハイ落ちを避けるために表面積に対して断面積を抑えるために素線一本一本が非常に細く、その加工自体も非常に神経を使います。
外皮を剥くにも一苦労で、中の素線にカッターの刃などが触れるとすぐに断線してしまい易く、ただでさえ細いケーブルのため、その素線1本の欠落も音に影響が出てしまいやすいのです。
ご覧のように外側の線は横一列に綺麗に絶縁体に巻きつけられた構造です。
中の素線も中心にある絶縁体に横一列に巻きつけられている中空同軸構造です。
一般的な同軸ケーブルの場合、中心線は撚り線になっている場合が多く、外側は編み線というのも多く見られます。
しかしこのように極薄の中空同軸構造というのは非常に珍しい形状です。
最近知りましたが、RCAケーブルの2803は、ドイツのオーディオ雑誌のRCAケーブルの原器として認定されているそうです。
さて音の傾向ですが、例の人の声の実験から判断すれば、圧倒的に色づけが少なく、クリアーで透明感が高く、音の解像度も非常に高く、超ハイスピードな信号の伝達という感じです。
そのため巷で言われるような低音の締りとか、音場感の再現とか、輝くような色艶とか、そのような表現とは異なる次元の音質になります。
そのような理由で現在もこれを超えるケーブルに遭遇していないために変更していないのですが、このケーブルを多くの方にお勧めできるかといえば、それはまた難しい話といえるでしょう。
まず通常のケーブルと異なり、ハイ落ち傾向を示さないため、バランス的に高音域が強いと感じる場合もあるでしょうし、非常にハイスピードな低音を再生するのですが、それが低音の量感がないとか低音域が不足気味として感じられる事もあり、そのような意味では一般的に聞き馴染んだケーブルとはバランス的に異なって聞こえやすい場合があります。
またケーブルも非常に細いため、特にスピーカーケーブルなどインピーダンスの低い信号のやり取りなどの場合、長さがもろの影響を与えやすいため、スピーカーの近くにアンプを設置する必要性もあります。
先ほどのように加工も非常に困難で、曲げなどにも非常にやりにくいケーブルですので、使用上非常に神経質で使いにくいものです。
音楽ソースやプレーヤー、アンプなどの音もストレートに表現してしまい、組み合わせによっては粗ばかりが目立ち易くなることもあり、必ずしもそれがいい音であるとは限らないのです。
逆に一般的に販売されているケーブルの多くは、様々なアイディアを盛り込まれ、そのような細かい影響を受けにくいように音作りされている場合も多く、その音が好みの音であるのならそちらを使用するほうが賢明です。
そのようなわけでアンプもケーブルもずっと同じものを使用してきているわけですが、これはあくまでもストレートにできるだけ色付けを排除した音楽を聴きたいためという理由であって、絶対これが最高だなんていう話ではありません。
世の中に様々な音を奏でるオーディオ装置が日々生み出されるのも、それだけ多様した音の好みがあるからですので、その中から自分の好みを見つけ出し、そして育てていくものではないでしょうか。
そのような音の傾向を掴むためにも、一度聞きなれた人の声を利用してみるのもひとつの手です。
そしてその好みの傾向が見つかると、おのずとそのような音作りも容易くなります。
その音作りのひとつとして、ケーブルを変えて作り上げるのもまた楽しいものですね。
と話が長くなってしまいますので今回はここまで。
また次回楽しい話をしていきたいと思います。
2013/02/04 11:18 |
振動を考えてみますの続き。 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
前回のブログでは、うちで鳴らしている見るも無残な姿の惨たらしいAudioNirvanaのダンボールスペシャルを例に、振動について少しお話をしました。
多分この振動や共振に関する話をすれば、ものすごく膨大な話を展開しても収まりがつきそうにないような事ですし、私もこの分野の専門的な研究者というわけではないので、あくまでも今までの実験や経験を基にしたお話しまでしかできません。
おそらく専門書などを探せば、この手に関する記述や論文も数多く出てくると思いますが、数値データーや理論などのようなもので音色の良し悪しが決められないように、やはりどうしても自らの体験や経験など、その裏付けも必要になります。
今回のお話はスピーカーを例にとりながらお話しましたが、これらはアンプでもプレーヤーでも無関係な話ではありませんので、皆様もいろいろと試してみると新たな発見があるかもしれません。
もしセッティングやチューニングを進めても変化を感じられないというケースもあるでしょうし、それらが気にならない場合なら特別熱心になる必要もない話しですので、皆様それぞれのチューニングを進めていただければと思います。
さて、話は少し飛びますが、わたしがAudioNirvanaの超強力なハイスペックフルレンジを、ダンボールというエンクロージャーとしては最低最悪の部類に該当するもので鳴らしているわけですが、本来私は高比重高剛性主義を貫いてきました。
もちろんそれらは正しいと思い、それを信念のごとく持っていたわけですが、前回のブログにも記載したように、コンクリートの床が振動を起こし、オーディオ全体の音を濁していた経験もあったため、少し自分が持つ常識を疑ってみることにしたのです。
それはいわば自分が考えてきた常識というものを、非常識な考えとしてみるとどうか、そのような視点でも考えてみようと思ったのです。
たとえばアナログプレーヤーを例に取れば、それまで一般的な常識といえば、ハウリングなどに絶対的な優位性が必要で、ターンテーブルも巨大な高質量による慣性モーメントを稼ぐなど、まるで金属の塊の見本市みたいなプレーヤーこそが素晴らしい物だと信じていた頃もあります。
でもこれとまったく正反対の対極のプレーヤーに、ロングセラーでいまだに世界中で人気の高いLINNのLP12というモデルがあります。
そのコンパクトな姿からは想像できない、伸びやかな低音域の再生や切れやスピード感など、多少使いこなしは難しいものですが、巨大で重ければいいという風潮の流れに一石を投じるものだったと思います。
そのためか、最近は比較的小型でコンパクトでありながら、優秀な再生が可能なターンテーブルも出てきましたし、一方大型の重量級のものに関しても、十分共振などの制動を考慮して、音が暗く沈んだようにならないようにするなど、やはり時代とともに研究されています。
私のところのGT2000も、ダイレクトドライブのモデルとしては巨大な部類ですが、当時はこの巨大で重量級のものこそが偉いとさえ思っていましたからね。
さてそんな常識非常識の話の中で、スピーカーに関しても気になるものがあったのです。
以前のブログでも一度ご紹介しましたけど、それはフランス製のPHY-HPというブランドのユニットをはじめて知ったときです。
ø voice coil = 25 mm
h = 8 mm 2 layers silk silver
M = 5,9 gr
dB = 98
G = 1,4T alnico Alcomax 3SC
Admissible power = 15 W rms
fs = 40 Hz
re = 12,8 Ohm
Qes = 0,65
Qms = 6,10
Qts = 0,59
Vas = 97 litre
Z = 15 Ohm
Zmin = 14,4 Ohm
Zmax = 155 Ohm
D = 176 mm
Ms = 9,4 gr
Le = 1,1 mH
このユニットですが、軽量振動版を非常に強力なアルニコマグネットで駆動するため、音圧など能率もクラスを超えたものですが、これだけ見ると非常に強固で重量級のエンクロージャーで鳴らす必要性があるのではと思えます。
ユニットのメインフレームはブロンズ製になり、振動板後面のフレームは比較的細身に出来ているため、背面への音圧は、あまり負荷がかかりにくい構造を狙ったものかもしれません。
そのためか、メーカーの推奨の鳴らし方としては、巨大な平面バッフルを指定しています。
そしてこのユニットに関して、ある海外のガレージメーカーが専用のエンクロージャーを製作しました。
そのエンクロージャーの製作風景を見た時、ここでのひとつ自分の持つ常識の一部が崩されました。
エンクロージャーの正確な材質は不明ですが、非常に薄い板を用い、わずかな補強を添えられて作られているエンクロージャーは軽量です。
しかも構造上平行面を持ちにくいために、内部に吸音材などを詰め込む事もされていませんので、吸音材などによる音への影響も非常に少なそうです。
ユニット単体で見ればかなり強力なはずですので、強固で高比重のエンクロージャーなどにガッチリと固定するのが常識です。
でもこのエンクロージャーはそれとはまったく逆の、軽量で比較的剛性も高くないエンクロージャーに入れて鳴らしています。
もちろん後面開放型という事もあり、普通のBOXと同じ理屈で考えるわけにはいきませんし、バックロードホーンのような、エネルギーの大きな低音域を積極的に鳴らすものの場合、このような理屈には当てはまらないのも事実です。
しかしこのような鳴らし方もあるという事が、高比重高剛性主義の自分の常識を、一度見直してみようというきっかけになったのも事実です。
でもだからって段ボールは・・・・・
これも非常識極まりない話ですけど、そんな非常識な世界もすべてが非常識とは限らず、常識こそが本当の非常識という事もありえます。
皆さんの中にはダンボールエンクロージャーを経験された方もいるかもしれませんが、思ったほどひどいなり方にならないのも事実です。
どんなにがんばっても、良質な木材のようには鳴らす事はできないのも事実ですが、うちで実際に試聴された方は、予想外の出来事に皆驚かれていたのも事実です。
ただそんな非常識を非常識として片付けるのは簡単ですが、一度そのような非常識といわれる事を疑ってみると、意外と楽しい新たな発見に出会えるかもしれませんね。
という事で長くなってしまいましたが、今回はここまで。
また次回楽しい話をしたいと思います。
サムライジャパンでございます。
前回のブログでは、うちで鳴らしている見るも無残な姿の惨たらしいAudioNirvanaのダンボールスペシャルを例に、振動について少しお話をしました。
多分この振動や共振に関する話をすれば、ものすごく膨大な話を展開しても収まりがつきそうにないような事ですし、私もこの分野の専門的な研究者というわけではないので、あくまでも今までの実験や経験を基にしたお話しまでしかできません。
おそらく専門書などを探せば、この手に関する記述や論文も数多く出てくると思いますが、数値データーや理論などのようなもので音色の良し悪しが決められないように、やはりどうしても自らの体験や経験など、その裏付けも必要になります。
今回のお話はスピーカーを例にとりながらお話しましたが、これらはアンプでもプレーヤーでも無関係な話ではありませんので、皆様もいろいろと試してみると新たな発見があるかもしれません。
もしセッティングやチューニングを進めても変化を感じられないというケースもあるでしょうし、それらが気にならない場合なら特別熱心になる必要もない話しですので、皆様それぞれのチューニングを進めていただければと思います。
さて、話は少し飛びますが、わたしがAudioNirvanaの超強力なハイスペックフルレンジを、ダンボールというエンクロージャーとしては最低最悪の部類に該当するもので鳴らしているわけですが、本来私は高比重高剛性主義を貫いてきました。
もちろんそれらは正しいと思い、それを信念のごとく持っていたわけですが、前回のブログにも記載したように、コンクリートの床が振動を起こし、オーディオ全体の音を濁していた経験もあったため、少し自分が持つ常識を疑ってみることにしたのです。
それはいわば自分が考えてきた常識というものを、非常識な考えとしてみるとどうか、そのような視点でも考えてみようと思ったのです。
たとえばアナログプレーヤーを例に取れば、それまで一般的な常識といえば、ハウリングなどに絶対的な優位性が必要で、ターンテーブルも巨大な高質量による慣性モーメントを稼ぐなど、まるで金属の塊の見本市みたいなプレーヤーこそが素晴らしい物だと信じていた頃もあります。
でもこれとまったく正反対の対極のプレーヤーに、ロングセラーでいまだに世界中で人気の高いLINNのLP12というモデルがあります。
そのコンパクトな姿からは想像できない、伸びやかな低音域の再生や切れやスピード感など、多少使いこなしは難しいものですが、巨大で重ければいいという風潮の流れに一石を投じるものだったと思います。
そのためか、最近は比較的小型でコンパクトでありながら、優秀な再生が可能なターンテーブルも出てきましたし、一方大型の重量級のものに関しても、十分共振などの制動を考慮して、音が暗く沈んだようにならないようにするなど、やはり時代とともに研究されています。
私のところのGT2000も、ダイレクトドライブのモデルとしては巨大な部類ですが、当時はこの巨大で重量級のものこそが偉いとさえ思っていましたからね。
さてそんな常識非常識の話の中で、スピーカーに関しても気になるものがあったのです。
以前のブログでも一度ご紹介しましたけど、それはフランス製のPHY-HPというブランドのユニットをはじめて知ったときです。
ø voice coil = 25 mm
h = 8 mm 2 layers silk silver
M = 5,9 gr
dB = 98
G = 1,4T alnico Alcomax 3SC
Admissible power = 15 W rms
fs = 40 Hz
re = 12,8 Ohm
Qes = 0,65
Qms = 6,10
Qts = 0,59
Vas = 97 litre
Z = 15 Ohm
Zmin = 14,4 Ohm
Zmax = 155 Ohm
D = 176 mm
Ms = 9,4 gr
Le = 1,1 mH
このユニットですが、軽量振動版を非常に強力なアルニコマグネットで駆動するため、音圧など能率もクラスを超えたものですが、これだけ見ると非常に強固で重量級のエンクロージャーで鳴らす必要性があるのではと思えます。
ユニットのメインフレームはブロンズ製になり、振動板後面のフレームは比較的細身に出来ているため、背面への音圧は、あまり負荷がかかりにくい構造を狙ったものかもしれません。
そのためか、メーカーの推奨の鳴らし方としては、巨大な平面バッフルを指定しています。
そしてこのユニットに関して、ある海外のガレージメーカーが専用のエンクロージャーを製作しました。
そのエンクロージャーの製作風景を見た時、ここでのひとつ自分の持つ常識の一部が崩されました。
エンクロージャーの正確な材質は不明ですが、非常に薄い板を用い、わずかな補強を添えられて作られているエンクロージャーは軽量です。
しかも構造上平行面を持ちにくいために、内部に吸音材などを詰め込む事もされていませんので、吸音材などによる音への影響も非常に少なそうです。
ユニット単体で見ればかなり強力なはずですので、強固で高比重のエンクロージャーなどにガッチリと固定するのが常識です。
でもこのエンクロージャーはそれとはまったく逆の、軽量で比較的剛性も高くないエンクロージャーに入れて鳴らしています。
もちろん後面開放型という事もあり、普通のBOXと同じ理屈で考えるわけにはいきませんし、バックロードホーンのような、エネルギーの大きな低音域を積極的に鳴らすものの場合、このような理屈には当てはまらないのも事実です。
しかしこのような鳴らし方もあるという事が、高比重高剛性主義の自分の常識を、一度見直してみようというきっかけになったのも事実です。
でもだからって段ボールは・・・・・
これも非常識極まりない話ですけど、そんな非常識な世界もすべてが非常識とは限らず、常識こそが本当の非常識という事もありえます。
皆さんの中にはダンボールエンクロージャーを経験された方もいるかもしれませんが、思ったほどひどいなり方にならないのも事実です。
どんなにがんばっても、良質な木材のようには鳴らす事はできないのも事実ですが、うちで実際に試聴された方は、予想外の出来事に皆驚かれていたのも事実です。
ただそんな非常識を非常識として片付けるのは簡単ですが、一度そのような非常識といわれる事を疑ってみると、意外と楽しい新たな発見に出会えるかもしれませんね。
という事で長くなってしまいましたが、今回はここまで。
また次回楽しい話をしたいと思います。
2013/02/04 11:17 |
振動を考えてみます。 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さてここ数回に分けてYAMAHAのGT2000に装備してある、YSA-2ピュアストレートアームの、アームパイプを改造するお話をしました。
トーンアームの剛性が信号のピックアップ性に直接影響し、音の切れ味やスピード感や解像度などにとても大きな影響があるようですね。
一般的にショートアームの方が同じ材質なら剛性も高くなりますので、おおらかな鳴らし方をするなら逆にロングアームの方が優位性があるのかもしれませんね。
さて時々質問を受ける事があるのですが、うちで鳴らしているAudioNirvanaですが、梱包用にストックしていたダンボール製のエンクロージャー(エンクロージャーっていうな)に入れて、健全なオーディオマニアなら卒倒してしまう、見た目も見るも無残な姿で鳴らしているわけで、誰が見てもその外観通り惨い音がすると確信していると思います。
当然ダンボールなんて、エンクロージャーの材質としてみれば最低最悪の部類で、粗悪な木材のほうがよほど良い音がするのは間違いないでしょう。
でも、実際うちで聴いた人は、その見た目と裏腹の再生音に驚く事がほとんどです。
という事で、今回はそのあたりを含めた振動について少し考えてみたいと思います。
前にもお話しましたが、以前私はALTECの515Cを36ミリ厚のアピトン合板の強固なエンクロージャーに入れて鳴らしていました。
もちろん補強も強固な組み方をしてあります。
高剛性高比重のエンクロージャーは、515のハイスピードな強力なエネルギーを受け止めるためには必要不可欠、そして床は地面にダイレクトにコンクリートを流し込み、その上に重歩行用のハードなシートで覆うという、徹底的に剛性を高める方向性の場所で鳴らしていました。
大型エンクロージャーといっても、床にべた置きにはせず、当初はノリタケの硬質セラミックベースの上に乗せ、コイン上のスペーサーをかませた状態で鳴らしていたのです。
現在のダンボール箱や雑誌の上に載せたりしている姿とは真逆の鳴らし方です。
ところで皆さんは、様々なスピーカーの置きかたをテストされた方は多いのではないでしょうか。
今は少なくなりましたが、かつて流行りだったブックシェルフタイプのスピーカーなど、高さを合わせる目的以外に、音のチューニングという意味で、様々な材質の台に乗せたり、様々な置きかたを工夫した経験をお持ちの方も多いはず。
上に鳴きを抑えるために錘を載せたり、台とスピーカーの間にコインを挟んでみたりなど、それによって再生音が変わる経験をされた方は多いと思います。
でもよく考えてみると、アンプやソースやケーブルが同一なら、入力信号は基本的に同じはずです。
そしてその信号に対しユニットが反応するというところまでは基本的に変化はないはず。
しかし実際聞こえる音が変化したのはなぜ?
スピーカーを機械としてみた場合、入力信号に対し振動版が動いて音を出します。
そこでその音をより正確に出すためには、支店と作用点、作用と反作用の観点からも、ぐらつきのないしっかりとした所に置いて鳴らすのは基本です。
そんな事様々な教科書に書かれた基本中の基本なので、皆さんには常識だと思います。
でもこれは一定の振幅運動とだけみている場合の話で、実際の音楽には様々な周波数の混在する信号になりますので、単純なピストンモーションの理屈など通用しない非常識な世界になります。
また台やスタンドの材質や、間に挟むスペーサーによってスピーカの音が変わるのはなぜでしょう?
話を少し戻しますが、私がALTECを鳴らしている時、はじめはあまり気がつかなかったのですが、実はコンクリート特有の低周波の雑音が音に乗って聞こえていたのです。
エンクロージャーも高比重高剛性、ユニットもハイスピードな高エネルギー高反応、そしてその動きをしっかり抑えるために硬質セラミックのベース。
実はこれがダイレクトにコンクリートの床に伝わり、コンクリートの床全体、つまり地面を激しく振動させていました。
その地面の振動がコンクリートに再び乗り、そしてその振動が今度はスピーカーのエンクロージャーにも伝わり、置いてあるアンプやプレーヤーなど、オーディオ機器全体に伝わっていたのです。
そのためコンクリート特有の低周波数域の振動が、結果として音を濁らせる音を助長してしまったのです。
地面に直接コンクリートを流し込んだのだから振動には強いと信じていましたが、コンクリートでも地面でも、固有の共振を起こしてしまうのですね。
この理屈は巨大な超重量級のターンテーブルを持つアナログプレーヤーでもよくある話で、ハウリングなどには強そうで凄そうな音がしそうな感じは受けるものの、実際の再生音はデリカシーに欠けたぱっとしない音なんていうことが多い事からも伺える話です。
もちろん歩く度ギシギシ鳴ってしまう弱い床や、ガンガン響きやすい床の場合よりはましとはいえ、一番硬いといわれるダイヤモンドでさえ弾性があることからも、程度の差こそあれ固有の鳴きが生じてしまうのです。
そのような意味で言えば、高比重高剛性ならすべてよしとはいかず、最終的には剛と軟のバランスのとり方といえます。
過ぎざるは及ばざるが如しということですね。
ところで先ほどのエンクロージャーの置き方やセッティングでの音の違いの話ですが、一番大きな要因としては、エンクロージャー全体の共振モードの変化が大きいのではないでしょうか。
これはどのような構造や材質でも同じで、置き方や接触のさせ方、または錘を載せたりするのも、この床や台、スピーカー全体の共振モードを大きく変化させるからだと思います。
そしてその共振モードの響き方も音として聞こえてくる部分もあり、それが不快な音を出さなくなればよい音として感じるわけで、そのため皆さんも様々なセッティングを試みているのではないでしょうか。
そしてこの共振モードの変化は、ユニット自体にも振動として伝わりますので、その相乗効果もあって音に大きく影響してくるものだと思います。
またこれはBOX型のエンクロージャーの場合ですが、どうしてもはこの内部には平行面が起きますので、そこで様々な周波数の定在波も起こし、それもエンクロージャーの共振に大きな影響を与えてしまいます。
この定在波はエンクロージャーの共振だけでは収まらず、ユニット裏面から振動版を直接振動させてしまう事もあり、入力信号以外の音が振動版に乗ってしまい、結果として音を濁らせることも多くあります。
これが箱特有の音として認識される部分でもあります。
さてスピーカーを自作される方にとって大きな関心ごとのひとつに、音の良い材質の選定というものがあります。
ネット上でも皆さんご紹介されていると思うので、何が音がいいだのあれは音がよくないだのと言う話を目にする機会も多いはずです。
これなども例の共振の違いに大きな影響があり、それが結果として音の良し悪しを決めていると思います。
またこの共振の性質ですが、補強材の入れ方や組み方でも大きく変わる為、音質的に評判の良い板でエンクロージャーを組んでみたものの、思ったように良い音がしなかったり、比較的評判のよくない材質を用いたものの、とてもすばらしい音のするエンクロージャーになったり、板特有の響きの良し悪し以外にも様々な要因があります。
これらはある程度自作を経験すれば意外と見つけやすい事なのですので、様々な情報を参考に、色々とテストしてみてはいかがでしょうか。
そのような意味でうちにあるダンボールスペシャルは、非常識極まりない不健全な鳴らし方といえます。
見た目の悪さもそうですが、誰が考えたってまともな音などしそうもありません。
でも実際に試聴した人を十分驚かす事も、下手なスピーカシステムより繊細で高反応な音だって出せないわけではありません。
部屋中の空気を動かすような物凄い低音なんて出すのは難しい話ですけど、ドラムのアタック音もシンバルンの切れ味も、繊細なバイオリンの弦の擦れる音も、艶のある色気を感じる歌声も、こんな惨たらしいダンボールのスピーカーの再生音に到達できないものは数多くあるのではないでしょうか。
ある意味最低最悪の材質だからこそ、定在波の処理や箱鳴りの抑制など、はじめてそこから見えてくる世界もあります。
闇雲に板厚を分厚くすればいいとか、補強をたくさんすればいいとか、そのような常識が必ずしも適切ではない点を教えてくれます。
もちろん木材のようにある程度のレベルへ容易く到達できませんが、今までの常識的な既成概念や固定概念を打ち砕くものを感じるはずです。
世界の名機を持ち込んだからといって、人気や評判が良いシステムを手に入れたからといって、必ずしもすばらしい音楽を聴けるとは限りません。
皆さんもそんなお手持ちの機器を、今一度鳴らし方を見直してはいかがでしょう。
隠れているすばらしい素質を見つける事ができるかもしれませんよ。
というよりいい加減ダンボールで限界への挑戦なんてしてないで、とっとと木製のエンクロージャーを作れといわれそうですけどね。
という事で今回はここまで。
また次回楽しい話をしたいと思います。
サムライジャパンでございます。
さてここ数回に分けてYAMAHAのGT2000に装備してある、YSA-2ピュアストレートアームの、アームパイプを改造するお話をしました。
トーンアームの剛性が信号のピックアップ性に直接影響し、音の切れ味やスピード感や解像度などにとても大きな影響があるようですね。
一般的にショートアームの方が同じ材質なら剛性も高くなりますので、おおらかな鳴らし方をするなら逆にロングアームの方が優位性があるのかもしれませんね。
さて時々質問を受ける事があるのですが、うちで鳴らしているAudioNirvanaですが、梱包用にストックしていたダンボール製のエンクロージャー(エンクロージャーっていうな)に入れて、健全なオーディオマニアなら卒倒してしまう、見た目も見るも無残な姿で鳴らしているわけで、誰が見てもその外観通り惨い音がすると確信していると思います。
当然ダンボールなんて、エンクロージャーの材質としてみれば最低最悪の部類で、粗悪な木材のほうがよほど良い音がするのは間違いないでしょう。
でも、実際うちで聴いた人は、その見た目と裏腹の再生音に驚く事がほとんどです。
という事で、今回はそのあたりを含めた振動について少し考えてみたいと思います。
前にもお話しましたが、以前私はALTECの515Cを36ミリ厚のアピトン合板の強固なエンクロージャーに入れて鳴らしていました。
もちろん補強も強固な組み方をしてあります。
高剛性高比重のエンクロージャーは、515のハイスピードな強力なエネルギーを受け止めるためには必要不可欠、そして床は地面にダイレクトにコンクリートを流し込み、その上に重歩行用のハードなシートで覆うという、徹底的に剛性を高める方向性の場所で鳴らしていました。
大型エンクロージャーといっても、床にべた置きにはせず、当初はノリタケの硬質セラミックベースの上に乗せ、コイン上のスペーサーをかませた状態で鳴らしていたのです。
現在のダンボール箱や雑誌の上に載せたりしている姿とは真逆の鳴らし方です。
ところで皆さんは、様々なスピーカーの置きかたをテストされた方は多いのではないでしょうか。
今は少なくなりましたが、かつて流行りだったブックシェルフタイプのスピーカーなど、高さを合わせる目的以外に、音のチューニングという意味で、様々な材質の台に乗せたり、様々な置きかたを工夫した経験をお持ちの方も多いはず。
上に鳴きを抑えるために錘を載せたり、台とスピーカーの間にコインを挟んでみたりなど、それによって再生音が変わる経験をされた方は多いと思います。
でもよく考えてみると、アンプやソースやケーブルが同一なら、入力信号は基本的に同じはずです。
そしてその信号に対しユニットが反応するというところまでは基本的に変化はないはず。
しかし実際聞こえる音が変化したのはなぜ?
スピーカーを機械としてみた場合、入力信号に対し振動版が動いて音を出します。
そこでその音をより正確に出すためには、支店と作用点、作用と反作用の観点からも、ぐらつきのないしっかりとした所に置いて鳴らすのは基本です。
そんな事様々な教科書に書かれた基本中の基本なので、皆さんには常識だと思います。
でもこれは一定の振幅運動とだけみている場合の話で、実際の音楽には様々な周波数の混在する信号になりますので、単純なピストンモーションの理屈など通用しない非常識な世界になります。
また台やスタンドの材質や、間に挟むスペーサーによってスピーカの音が変わるのはなぜでしょう?
話を少し戻しますが、私がALTECを鳴らしている時、はじめはあまり気がつかなかったのですが、実はコンクリート特有の低周波の雑音が音に乗って聞こえていたのです。
エンクロージャーも高比重高剛性、ユニットもハイスピードな高エネルギー高反応、そしてその動きをしっかり抑えるために硬質セラミックのベース。
実はこれがダイレクトにコンクリートの床に伝わり、コンクリートの床全体、つまり地面を激しく振動させていました。
その地面の振動がコンクリートに再び乗り、そしてその振動が今度はスピーカーのエンクロージャーにも伝わり、置いてあるアンプやプレーヤーなど、オーディオ機器全体に伝わっていたのです。
そのためコンクリート特有の低周波数域の振動が、結果として音を濁らせる音を助長してしまったのです。
地面に直接コンクリートを流し込んだのだから振動には強いと信じていましたが、コンクリートでも地面でも、固有の共振を起こしてしまうのですね。
この理屈は巨大な超重量級のターンテーブルを持つアナログプレーヤーでもよくある話で、ハウリングなどには強そうで凄そうな音がしそうな感じは受けるものの、実際の再生音はデリカシーに欠けたぱっとしない音なんていうことが多い事からも伺える話です。
もちろん歩く度ギシギシ鳴ってしまう弱い床や、ガンガン響きやすい床の場合よりはましとはいえ、一番硬いといわれるダイヤモンドでさえ弾性があることからも、程度の差こそあれ固有の鳴きが生じてしまうのです。
そのような意味で言えば、高比重高剛性ならすべてよしとはいかず、最終的には剛と軟のバランスのとり方といえます。
過ぎざるは及ばざるが如しということですね。
ところで先ほどのエンクロージャーの置き方やセッティングでの音の違いの話ですが、一番大きな要因としては、エンクロージャー全体の共振モードの変化が大きいのではないでしょうか。
これはどのような構造や材質でも同じで、置き方や接触のさせ方、または錘を載せたりするのも、この床や台、スピーカー全体の共振モードを大きく変化させるからだと思います。
そしてその共振モードの響き方も音として聞こえてくる部分もあり、それが不快な音を出さなくなればよい音として感じるわけで、そのため皆さんも様々なセッティングを試みているのではないでしょうか。
そしてこの共振モードの変化は、ユニット自体にも振動として伝わりますので、その相乗効果もあって音に大きく影響してくるものだと思います。
またこれはBOX型のエンクロージャーの場合ですが、どうしてもはこの内部には平行面が起きますので、そこで様々な周波数の定在波も起こし、それもエンクロージャーの共振に大きな影響を与えてしまいます。
この定在波はエンクロージャーの共振だけでは収まらず、ユニット裏面から振動版を直接振動させてしまう事もあり、入力信号以外の音が振動版に乗ってしまい、結果として音を濁らせることも多くあります。
これが箱特有の音として認識される部分でもあります。
さてスピーカーを自作される方にとって大きな関心ごとのひとつに、音の良い材質の選定というものがあります。
ネット上でも皆さんご紹介されていると思うので、何が音がいいだのあれは音がよくないだのと言う話を目にする機会も多いはずです。
これなども例の共振の違いに大きな影響があり、それが結果として音の良し悪しを決めていると思います。
またこの共振の性質ですが、補強材の入れ方や組み方でも大きく変わる為、音質的に評判の良い板でエンクロージャーを組んでみたものの、思ったように良い音がしなかったり、比較的評判のよくない材質を用いたものの、とてもすばらしい音のするエンクロージャーになったり、板特有の響きの良し悪し以外にも様々な要因があります。
これらはある程度自作を経験すれば意外と見つけやすい事なのですので、様々な情報を参考に、色々とテストしてみてはいかがでしょうか。
そのような意味でうちにあるダンボールスペシャルは、非常識極まりない不健全な鳴らし方といえます。
見た目の悪さもそうですが、誰が考えたってまともな音などしそうもありません。
でも実際に試聴した人を十分驚かす事も、下手なスピーカシステムより繊細で高反応な音だって出せないわけではありません。
部屋中の空気を動かすような物凄い低音なんて出すのは難しい話ですけど、ドラムのアタック音もシンバルンの切れ味も、繊細なバイオリンの弦の擦れる音も、艶のある色気を感じる歌声も、こんな惨たらしいダンボールのスピーカーの再生音に到達できないものは数多くあるのではないでしょうか。
ある意味最低最悪の材質だからこそ、定在波の処理や箱鳴りの抑制など、はじめてそこから見えてくる世界もあります。
闇雲に板厚を分厚くすればいいとか、補強をたくさんすればいいとか、そのような常識が必ずしも適切ではない点を教えてくれます。
もちろん木材のようにある程度のレベルへ容易く到達できませんが、今までの常識的な既成概念や固定概念を打ち砕くものを感じるはずです。
世界の名機を持ち込んだからといって、人気や評判が良いシステムを手に入れたからといって、必ずしもすばらしい音楽を聴けるとは限りません。
皆さんもそんなお手持ちの機器を、今一度鳴らし方を見直してはいかがでしょう。
隠れているすばらしい素質を見つける事ができるかもしれませんよ。
というよりいい加減ダンボールで限界への挑戦なんてしてないで、とっとと木製のエンクロージャーを作れといわれそうですけどね。
という事で今回はここまで。
また次回楽しい話をしたいと思います。