2024/12/04 08:28 |
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2013/05/24 02:24 |
振動板の動きは |
みなさまこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さて前回はP610復刻版のひとつである、AucharmP610Sをご紹介しました。
表向きの顔つきはP610そのものですが、強化された磁気回路や、6Nで巻かれたボイスコイルを採用するなど、オリジナルのP610から進化したバージョンとなります。
取り付け寸法などに関してはオリジナルと同一であるものの、大型化された磁気回路のヨークの関係で、ユニットの奥行き寸法は異なります。
前回のお話でもありましたが、オリジナルの最も近い復刻版であるValavP610Vは現在生産終了となってしまいましたが、同一モデルの進化改良版として、別ブランドからオリジナル寸法の復刻版が発売されています。
こちらはP610SLとして近日掲載予定です。
外観はほぼ同一ですが、このモデルも磁気回路の磁石の改良や6N銅のボイスコイルの採用など、目に見えない改良が施されたモデルとなります。
さて前回のブログでもお話しましたが、今でもこれだけP610に拘りを持つメーカーがいるのは、やはりその優れた基本設計のよさがあるからです。
その代表格といえるのが、絶妙なカーブと円状に振動板に付けられたコルゲーション模様が特徴的な振動板です。
歴代P610のオリジナルが持つアキレス腱といえるエッジ部分は改良されていますが、その基本はオリジナルのP610と同一です。
エッジや磁気回路には手を加えても、P610の持つ振動板の形状を継承しているのは、やはりそれが優れた音質を提供できる要素が大きいからです。
スピーカーの振動板といえば、ボイスコイルに信号が流れる事により磁界が発生するため、それによって発生する振動を音に変えているのは皆さんもご存知の事です。
そして振動板はボイスコイルの動きにあわせて前後にピストン運動をして、その振動が音となるのですが、これは単一な周波数の信号を流しているときの話です。
一般的に音楽などの信号を再生させれば、その周波数は様々で、しかも様々な音の信号が複雑に絡み合って再生されますので、単純にピストン運動のように、前後にストロークするというわけにはいきません。
中には振動板は単純に前後にストロークしているというイメージを持つ方もいるようで、振動板の剛性は高ければ高いほどいいと主張する方もいます。
しかしご存知のように音を再生させるといっても、その信号は単調な単一周波数の信号というわけにもいかず、様々な音色を含む幅広い周波数の合成となりますから、振動板が単調なストロークを行っていない事は容易に想像できます。
エネルギーが大きく振幅の大きい低域の信号であれば、見た目でブルブルと振動板がゆれるのは見えますけど、高音域の信号の動きなど、見た目ではわからないだけではなく、実際どのように振動しているのかさえわかりにくいほど複雑な状況です。
再生帯域が極端に狭い限られた周波数だけを再生させるのであれば、その周波数帯域を得意とする振動板を持つユニットで、的確にピストン運動させればいいのでしょうけど、再生帯域が非常に広いフルレンジユニットの場合そのようなわけにはいきません。
そのような複雑な音を再生させるために、すべての周波数の帯域をストロークだけで再生させる事は困難なため、振動板のいたるところで分割振動の発生などを利用し、どうにか再生させるのが現状となります。
そのような状況を踏まえた場合、振動板の上では周波数帯域によってはドップラー効果などが発生したり、位相のずれなどの発生もありますから、それらをばらばらな音にならないように考えて、振動板のコーンのカーブ形状や、振動板の剛性バランスなどが決められています。
そんな複雑怪奇な状況を再現する上で、P610のもつ振動板の形状は非常に優れているのです。
広帯域再生を目指し、それぞれ得意とする周波数帯域に合わせたユニットを組み合わせ、4ウエイや5ウエイといったマルチシステムを組み上げるのもオーディオの目指すひとつの方向性であるものの、各ユニットの位相のずれや音色の違いなど、一体感のある優れたまとまりを見せるシステムを構築するのは至難の業です。
もちろん2ウエイや3ウエイというシステムでも同じことで、それがゆえに音作りに迷い悩むマニアの方も少なくありません。
そのような時こそ、信頼できるまとまりの良さを誇る優れた音質を持つフルレンジユニットがあれば、音作りの参考として、または現状の問題点の洗い出しという意味でも、自分の音作りのリファレンスとして、優れた音質のフルレンジは活躍できます。
という事で今回はここまで。
また次回も楽しい話をしていきたいと思います。
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2013/05/22 20:14 |
P610復刻版と発展型 |
みなさまこんにちは。
サムライジャパンでございます。
今までとロゴのタイトルが異なりますが、現在の新しいホームページのロゴとなりますので、今後こちらをごひいきにお願いします。
まだまだ未掲載のページも多くありますが、以前とはデザインも大きく変わり、新たに取り扱いが増えたブランドもございますので、お時間のあるとき是非リニューアル後のホームページをご覧ください。
上記ロゴをクリックしていただきますと、新ホームページをご覧いただけます。
さて前回のブログ更新よりだいぶ日が経ってしまいましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
前回までしばらくP610に関して書き込んできましたが、私が好きなP610は、前期型の初期バージョンで、当然新品の入手はできません。
しかも後期型でさえコンディションの良い物が少なく、中には左右で音圧が違ったり、また左右別々に入手した場合、音がまるで違うなんていうことも珍しくありません。
そうなるとどうにかして手に入れたくなるのが心情ですが、そのようなマニアの方の中には、とにかく数をそろえて、その中からベストマットングのペアを探すという兵の方さえいます。
しかし、中古とはいえ、人気商品ですからそれほど安いわけではなりませんから、結果的に数十万を注ぎ込んでなんていう話も耳にします。
そのようなわけで、現在ではP610の復刻版が登場しています。
以前も何度かご紹介しましたが、Valab P610V
この製品はP610の復刻版として、基本スペックは最終型モデルに近いものとなり、ポピュラーなP610の代替品となります。
しかしこのモデルは現在生産が完了してしまい、今後入手はできなくなります。
でも、このモデルの磁気回路を少し改良したものが、別ブランドとして生産されているので、多少価格はアップしますが、今後そちらをP610復刻版の標準モデルとして掲載予定です。
さてそんなP610関係の復刻版ですが、現在それらからの波及モデルも出てきました。
まずはAucharm P610Sです。
何だ、今までと同じP610の復刻版じゃないか。
そのように思われる方もきっと多いのではないでしょうか。
しかしよく見てみると、なにやらエッジの感じが多少色が違うとか、ちょっと違った印象もあるように思われる方もいるかもしれまん。
実はこのユニット、P610復刻版とは別物になります。
表向きの表情や、取り付け寸法のサイズなど、従来の歴代P610とまったく同じですが、実は大きな違いとして直ぐに気がつくのが、強化された磁気回路なのです。
画像はAucharm P610S
ぱっと見ただけでは気付きにくいのですが、従来のモデルと比較するとよくわかります。
画像はValab P610V
マグネットが長くなり、それに伴い磁気ヨークのサイズも拡大しています。
また外観以外にも、磁石のコバルト含有量を増やすなど、マグネットの見直しも図られています。
それ以外にも、ボイスコイルの巻き線に6N銅を採用するなど、初期初動を良くするための工夫もされています。
また表面上のエッジも改良が加えられているのです。
エッジの改良は振動版への音の影響の削減ともに、振動版の動きに対するフリクションの低減なども含まれています。
また振動板自体は基本的に共通であるものの、センターキャップなどの改良により、より繊細で伸びのある高域特性が出るように手が加えられました。
これらの改良で、基本的な能率も93dbへと向上し、より高い音圧を確保できるようになりました。
そのような改良のおかげで、従来のP610が持つ緻密で繊細な質感表現を得意とする音質に加え、力強さとワイドレンジな伸びやかさが加味され、P610を超える現代のP610といえるものです。
ここ最近は、今までのデフレや円高傾向のため、低価格で高性能ユニットが数多く市場に出回りました。
もちろんそれらの中にはすばらしい物も多くあるのですが、P610と比較してしまうとどうしても格の違いを感じてしまうものも事実です。
だからといってP610が世界一すばらしいというわけではなく、世界中の中で優れたユニットのひとつというものです。
今回ご紹介したAucharm P610Sですが、磁気回路やボイスコイル、またエッジやセンターキャップの改良や変更はあるものの、振動板自体はほとんど手を加えていません。
その大きな理由のひとつに、P610がもつ振動板の絶妙なカーブ形状があるのです。
この絶妙なコーンカーブが、P610の優れた音質の基本を成しているのも事実です。
そのためあえて振動板本体に手を加えていないのです。
何の変哲もないただの紙の振動板ですが、剛性と内部損失の絶妙なバランスの上に立っているため、きわめて高い質感表現も得意とするのです。
ただ剛性が高ければいいものではなく、内部損失が優れていればいいというわけでもなく、今まで数多くの革新的な新素材のユニットの多くが、一世を風靡しながらも短命で姿を消していった背景からも、やはり高音質で評価の高いユニットというのは、昔から変わりがないのも頷けます。
という事で今回はここまで。
以前も話しましたように、今後新たに取り扱いを始めるブランドのご紹介などを含めながら、また楽しいお話をしていきたいと思います。
2013/04/09 00:24 |
P610 再考 その7 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さてP610に関する話もだらだらと長くなってしまいましたが、具体的にどこがどういいのか?
実際所有されている方以外にとっては、古臭いボロイスピーカーにしか思えませんからね。
ところでこれは私の個人的な音の判断基準のひとつなのですが、以前にも何度か話したように入力信号に対する表現力の正確さを判断基準の大きなひとつとしています。
そのため一般的な音の良し悪しを判断するように、様々な音楽ソースを聞き比べて、低音の表現が良いとか、高音域の煌びやかさがどうとか、簡単に言えば、音が良いとか悪いとか、そのような意味での表現とは異なるかもしれません。
でも何も知らずにオーディオをはじめた頃は、ズンズンと響く低音が良いとか、スカッとした高域が良いとか、クリアーで透明感があれば良いとか、様々な音楽を聴いては音との良し悪しに関して右へ左へと好みも大きく変化していたのも事実です。
もちろんそれらもオーディオの楽しみの一つですから、そのような方向性の模索も楽しいのに変わりはないのですが、ただP610の前期型を手に入れて以来、入力信号に対する正確な再現性という観点でオーディオを捉えるようになってからは、今までアンプの選択、ケーブルの選択、スピーカーの選択といった、各種オーディオ機器の選択に関して、あまりブレる事が少なくなったのも事実です。
音源に対する忠実な再現世界を第一に考えてみると、そこには固有の個性的な色付けは極力少ないほうが良いため、場合によっては凡個性として感じられてしまい、あまり印象に残りにくい音色傾向に感じてしまう事もあるので、それが音のよさに直接感じられないという面もあります。
でもそのような癖や個性の少ない音の世界を知る事によって、個性的な音色の魅力もまたよく感じやすくなるため、それぞれの音の違う世界の楽しさも理解しやすくなるものです。
さてそんな能書きはほどほどにして、P610のお話の続きをしようと思います。
ご覧のようにボロボロのエッジは100円ショップのポリエステル100%のフェルトに張り替えて、ようやく本格的試聴が可能となりました。
本格的に聴き直してみるとやはり良いですね。
緻密で繊細な表現力の高さは、さすがといえるものです。
今までメインに鳴らしてきたAudioNirvanaだって、近年のユニットとしては類まれなるポテンシャルを秘めた高性能ユニットで、P610の後期型や最終型を凌駕する一面を見せ付けてくれましたけど、やはりP610前期型と比較すると、音色的にもやや個性的に感じる部分もあります。
たとえば人の声(家族や知人友人など、常に聞く機会の多い人の声)の再生の場合、P610前期型は本人の声に遜色ない方向性を感じるものの、それと比較すればAudioNirvanaの場合、さすがに別人とは感じませんけど、やや太い声と感じる部分や、少し若返ったからりとした印象を感じる部分もあります。
この人の声の再生を試してみるとわかりますけど、スペック的にすばらしいといえるユニットであっても、アンドロイドみたいな声だったり、野暮ったい声だったり、ギスギスした神経質な声だったり、もちろんアンプやケーブルの要素も絡んできますけど、意外と音の傾向を掴めると思ういます。
はなしはAudioNirvanaに戻しますけど、逆にこのやや個性的な傾向は、入力される音楽ソースに対して多少なりとも個性を付加させる事になり、そのため幅広い音楽ジャンルに対して、分け隔てを少なくし、音楽を楽しく聴くことができるのも事実です。
P610の後期型や最終型などに負けない解像力や分解能もあり、エネルギッシュな面ではP610以上ですから、これで音楽が楽しくないわけがありません。
しかしこれがP610の前期型となると、AudioNirvanaにパワフルさでは及ばないものの、人の声の正確な再現性はやはり格の違いを見せ付けます。
AudioNirvanaに比べると線の細さを感じますが、緻密さや繊細さはやはり一枚上手で、微細な音の違いも的確に表現する能力は非常に高く、久しぶりにP610前期型のポテンシャルの高さを感じました。
しかししばらく聴いていると、何か伸びやかさが足りないような、もっとしなやかで繊細な感じが出そうな感じもしてきました。
そこで手持ちで持っていた天然皮革のセーム革を触ってみれば、質量的にはやや重そうなものの、しなやかさと伸びのよさはフェルト以上に優れているようです。
そこで再度エッジの張替えを行う事にしました。
張り終えたばかりのエッジをバリバリと剥がし、同じようにセーム革へと張り替えてみました。
やはりといいますか、振動板を押したときの動きがよりスムーズです。
P610前期型のエッジはペラペラスカスカのスポンジで、もともと動きの対する制限も少ないものでしたから、セーム革のほうがそれに近い感じがします。
ただ経年劣化なのか、ダンパー自体の硬度がわずかに違いがあるようで、左右ベストな状態で揃えることは難しいかもしれません。
これは古いユニットの宿命で、仕方のない事かもしれませんね。
ただ汎用のサイズが合いそうなダンパーを装着するという事も十分考えられますけど、加工も面倒だし、根本的に全部バラさなければなりませんから、とりあえず安心して聴けるレベルまでの復旧にしておきます。
そして目ねじで固定していたユニットもねじ穴も加工して、爪つきナットで固定し直しました。
そしていざ試聴。
あれ?
P610ってこんな音だったかな?
P610の最終モデルを試聴したときも、こんな印象を受けました。
その時はやや期待はずれの意味でしたが、今回はまったくの逆です。
以前聴いていたとき平面バッフルでしたし、アンプも今とは違いました。
今回は140リットルのバスレフエンクロージャーですが、ダンボール製のインチキショートホーンも付いています。
簡単にバスレフポートの調整は済ませましたけど、もしかしたら今まで聴いてきたP610では最高のパフォーマンスかもしれません。
P610にこんな緻密で繊細な表現力があったのかと、今回改めて驚きました。
エッジを張り替え直後よりも、やはり多少エージングが進んできたほうがより繊細さを増していますし、音の質感表現も高くなりました。
そしてアコーステック楽器の質感表現は見事といえますね。
弦楽器、ピアノ、金管楽器に関わらず、とにかくリアルな音質です。
人の声の再現性の高さはもちろんですけど、当然ボーカルの声もすばらしいものです。
女性ボーカルの唇の動きがわかるような、演奏者の表情が見える、そんな印象にさえ感じるものです。
ホールに漂う空気の色さえ感じられる、そんな緻密で繊細な表現力もあります。
再生レンジは狭く、入力3Wという、今時ありえない低スペックのユニットですけど、それでもこれだけの表現力があるのですから、やはりその潜在能力は非常に高いものですね。
久しぶりにじっくりと聴きましたけど、やはり私の音作りの基本になっています。
もちろん大型マルチシステムのように、部屋中の空気を動かすような低音も出なければ、煌びやかで鮮やかな高域も出ません。
音がバシバシ飛んでくるような音量も絶対無理です。
でもこのキメ細やかで緻密で繊細な表現力に匹敵する音を出せるユニットって、探してみると意外と少ないと思います。
私が大型システムで、ALTECやマクソニックを使ってきたのも、やはりこのP610が持っていた高い質感表現を保ったまま、大音量とワイドレンジで楽しむためでした。
入力に対する正確な再現性。
改めてP610を聴き返すことになりましたけど、私の音作りの方向性は、やはりこれをベースにしているのは間違いないようです。
もちろん個性的な音作りもオーディオの楽しみの一つと感じるのも、やはりこれがベースにあるからかもしれませんね。
オーディオを始めたばかりの頃、どう見たって古臭いヘッポコスピーカーにしか思えなかったP610です。
振動板だってカーボンでもなければメタルでもないし、新素材とは無縁のただの紙です。
大昔のテレビやラジオの付属品のスピーカーみたいに、チープな感じが漂っています。
でもこの高い質感表現力は、やはり只者ではないようですね。
エッジがボロくなって以来、ほとんど鳴らされる事がなかったP610ですけど、改めて惚れ直しましたね。
と長くなってしまいましたので、今回はここまで。
次回からホームページリニューアルに伴い、新たに取り扱いを始めたブランドもございますので、それらも含めた話をしていきたいと思います。
2013/04/05 00:04 |
P610 再考 その6 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
さて日々暖かくなってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょう。
今回も前回に引き続き、P610エッジ張替えのお話の続きをしていきたいと思います。
ご覧のように私のところのP610前期型は、ポリエステル100%の100円ショップのフェルトの端切れを用い、エッジが消滅した状態から復活を遂げました。
そして早速視聴となったわけです。
今までこのエンクロージャーには、ダンボールスペシャル時代からのAudioNirvanaの16センチAlnicoユニットが取り付けられていました。
エンクロージャーの容積は約140リットルと、元々38センチの2ウエイのPA用ですから、一般的に考えれば16センチクラスという小型コンパクトの物とは別物です。
しかしAudioNirvanaのポテンシャルは非常に高く、たとえばP610の最終生産モデルなどと比較しても、負けずとも劣らない、十二分に張り合える優れた音を聞かせてくれました。
この純正箱のP610最終モデルも非常にバランスよくまとめられてはいるのですが、昔衝撃を受けたP610初期型のような緻密で繊細な表現力や質感表現などで見れば、やはり見劣りする面があるのを感じたものです。
その点AudioNirvanaの方は、このP610最終モデルより鳴りっぷりもよく、もうP610には戻らなくてもいいかなとさえ思えるほど高いポテンシャルを発揮しました。
しかしそうはいっても、心のどこかで僅かに引っかかる面があったのは事実です。
AudioNirvanaの場合、基本的に同じ構成で、16センチ~38センチまでラインナップがあり、しかもそれぞれの口径毎に、アルニコ、ネオジウム、フェライトと三種類の磁気回路が揃っているのですが、実はそれぞれ多少なりとも音質の傾向が異なるのです。
当然振動系の口径により振動板の剛性バランスを考えた設計がされているのでしょうが、基本的に同じ音色傾向に設定するために、振動系の材質そのものは基本的に共通だと思います。
そうなればそれぞれベストとされるバランスが生じてくるわけで、しかも磁気回路との兼ね合いも絡みますから、その傾向は似て異なる物となるのは当然です。
たとえばおなじAlnico磁気回路のAudioNirvanaのユニットを比較してみた場合、私がメインに使用していた16センチよりも、同じ磁気回路の20センチサイズの方が、緻密で繊細な傾向の音色になりやすい事からも、振動系の剛性バランスなどを含めた音への影響が、そのまま再生音の違いとなって感じられるのでしょう。
もちろんそれぞれの口径毎や磁気回路によって音質傾向に違いがあるものの、基本的な音色はAudioNirvana共通であり、明快で快活な音を聴かせてくれます。
さてそのような前置きはこの辺にして、いい加減ボロイP610はどうなの?
という話になりますね。
じつはエッジを直す前の事ですが、ダンボールスペシャルでAudioNirvanaを鳴らしている頃に、約80リットルのダンボール箱で、ボロボロのP610も鳴らしていたのです。
実はこの時、ただならぬものを感じていたのは確かです。
特にアコーステック楽器の質感表現が極めて高く、当然人の声の表現力も正確無比に近いほどの表現力を示していたのは確かです。
近年では圧倒的にポテンシャルが高いと感じていたAudio Nirvana 'Super 6.5 ALNICOも、まだ十分に慣らしこんでいる状態ではないものの、さすがにここまでは表現しきっていませんでした。
おそらく20センチサイズの方が、そのあたりは容易に表現しやすいかもしれませんけど、基本的に人の声の再生を中心に開発されたP610初期型は、ALTECのパンケーキのように、きわめて高い質感表現力を持ち合わせているようです。
これは私がマクソニックのウーハーを手に入れたばかりの頃の話になるのですが、当時の私は画像にあるボロイP610以外に、D130を手放すきっかけとなった、リサイクルショップで手に入れた、古い初期型の8オームバージョンも所有していました。
その頃私の部屋に頻繁に出入りする後輩がいたのです。
その後輩とは主にバイクが共通の趣味で、いつもバイク談義に花を咲かせていたのです。
しかし、ある日の事。
その後輩が帰宅途中で、確認せずに道路へ飛び出してきた女性の運転する車にぶつけられ、バイクは全損で廃車。
後輩も指の骨を折る怪我をしてしまいました。
そこでその後輩が、しばらくバイクに乗れないので、その穴埋めにオーディオをはじめると言い出したのです。
それまでオーディオのオの字も知らないまったくの素人でしたが、取りあえず2A3のシングルアンプと、当時売られていたP610後期型のアルニコモデルで自作する事を薦めたのです。
そんな経緯を持つ後輩が、怪我から約1年後の頃、私の部屋を訪ねて来て、
「先輩!P610の初期型一組譲ってください!!」
と、現金を握り締めてやってきたのです。
もう既に手持ちの後期型のP610は友人に売却済みとの事で、鳴らす物がないという理由を付けて私の部屋を訪れたのです。
話を聞くと、P610の後期型は非常にすばらしい音を奏でるものの、どうしても初期型のような高い質感が出なくて気になっていたとの事です。
そこで初期型を2組所有していた私のところへ、背水の陣で尋ねてきたというわけです。
P610を長年お使いになられているマニアの方の中にもお気付きの方もいると思いますが、デジタル化時代に焦点をあわせて生まれ変わったP610の後期型ですけど、スペック的には確かに大きく改善されていたはずなのですが、音の質感表現など、何か大切な物をどこかへ置き去りにしてしまったようです。
そのあたりをオーディオに対する先入観がまったくない、オーディオ初心者であった後輩も気付いていたらしく、私のところで何度も前期型を聞いていた事もあり、我慢できなくなったようでした。
と話がかなり逸れてしまいましたので今回はここまで。
次回はボロイP610前記型のエッジを、天然皮革のセーム革に張り替えたお話をしていきたいと思います。
2013/04/04 00:05 |
P610 再考 その5 |
みなさんこんにちは。
サムライジャパンでございます。
まだ未完成とはいえ、どうにか新ホームページを刷新する事ができました。
リンク切れや未掲載部分、製作途中のページもまだまだたくさんありますが、今後もさらに掲載予定の製品もたくさんございますので、随時少しずつ更新していきますので、長い目で見てくださいませ。
さてそのようなわけで、しばらくブログ記事の更新をサボってしまいましたので、引き続き前回からの話の続きをしていきたいと思います。
前回まではP610の魅力などを中心にお話をしてきましたが、今回はうちのボロイP610のエッジ張替えなどに関してお話をしていきたいと思います。
ご覧のとおりエッジが完全に崩れ去り、見るも無残な状態でした。
当然振動板もフラフラしてしまい、ボイスタッチも起こしてしまうため、まともに聴くことさえできません。
そこでエッジの張替えをしようと思い立ったのです。
P610のエッジは、私が所有する前期型はもちろんですけど、後期型にしてもやはりエッジがやられてしまっているユニットはかなり多いと思います。
16センチの小さいユニットですから、ちょっとした工作程度でエッジの張替えも可能ですから、今回はエッジの張替えのお話をしていきたいと思います。
P610の張り替え用のエッジというのも市販品としてもありますけど、家の中にあるものでどうにか対応できないものかと物色していたところ、100円ショップで以前買ったポリエステル100%のフェルトと、天然皮革のセーム革がありました。
本当はオリジナルの再生を目指すのなら、同じようなスポンジを用意するのがベストですけど、今回は横着して手持ちの材料を使って張替えをしてみることにしたのです。
とりあえず厚紙を当てて、模りをしておきます。
そこで双方の材質を比較してみると、ポリエステル100%のフェルトの方が質量的に軽いようでしたから、まずはそちらを張ってみました。
早速エンクロージャーへ取り付けて、試聴してみました。
今までは同じエンクロージャーにAudioNirvanaの16センチAinicoが付けられていましたから、そちらとの比較という意味でも興味のあるところです。
取り付け穴寸法はほぼ共通なのですけど、ねじ穴のピッチが異なるためそのままでは取り付けができませんから、少し角度を変えて取り付けてみました。
さて久しぶりの試聴開始。
となるのですが、実はエッジを張り替える以前にも、一時ダンボールスペシャルで簡単に試聴をしていたのです。
さすがにこの時は万全でもないし、しかもオーディオマニアが一蹴してしまうほど惨たらしいダンボールスペシャルですから、まともな結果を期待できないのも事実ですけど、でもこの時P610前期型のただならぬポテンシャルの高さの片鱗を感じてはいたのです。
そのような事もあって今回のP610復活劇に繋がって入るのですけど、一番の目的は、私の求める音の原点ともいえるP610前期型の再確認に意味合いも強いものでもあります。
という事で音はどうなの?
いい音するの?
音悪いの?
そんなボロでまともな音するわけないでしょう。
~ん~ん
という事で今回はここまで。
詳しい試聴結果に関しては、また次回お話をしていきたいと思います。